◆受電経路分散でリスクに備え
◇大手IT集う「キャリアホテル」/実質再エネ100%、省エネも進化
アット東京(東京都江東区、泉田達也社長)はこのほど、7月にサービス提供開始する「中央第3センター(CC3)」を報道陣に公開した。同社は数少ないインターネット相互接続点(IX)機能を持つデータセンター事業者だ。CC3はその高品位サービスの需要拡大を受け、2020年から建設プロジェクトを進めていた。各所からアクセスが良い芝浦・品川エリアの立地環境も生かし、事業拡大を進める方針だ。(海老宏亮)
同社は2000年に東京電力を中心に設立。12年にセコムに株式の大部分が譲渡され同社グループに異動したが、現在も東京電力パワーグリッド(PG)が33.3%を出資している。データセンターには様々な役割があるが、インターネットプロバイダー(ISP)やクラウド事業者などがネットの上位系統でデータトラフィックをやり取りするIX機能を持つことが強みだ。
◇縁の下の力持ち
米グーグルやアマゾンなど巨大ITも顧客であり、これらが高品位サービスをネット利用者に提供する基盤にもなる。いわばネット社会における「縁の下の力持ち」。IX機能を持つデータセンターは多様なIT大手が同じ空間で居を共にすることから「キャリアホテル」とも呼ばれる。
その専門性の高さから日本でキャリアホテルを展開する事業者は限られるが、アット東京はデータセンタービジネス最初期に進出し実績と知見を蓄えてきた。キャリアホテル事業の規模ではNTT系をも上回る。さらにその地位を高める構えの泉田社長は、CC3を、世界的大手の米エクイニクスといったライバルと競うための「築城」と表現する。
同社はこれまで東京と大阪を中心に立地を進めており、CC3は東京エリアで5カ所目の拠点だ。受電容量は4万キロワット。計8千平方メートルのサーバー室に3千ラックを設置できるスペックを確保する。IT企業に限らず増える高品位接続環境へのニーズに応える。
立地は芝浦・品川エリアを選んだ。各社がキャリアホテルを集積させてきた大手町や豊洲・有明エリアと大容量回線で結節し、手狭になりつつある既存エリアより拡張の余地も高い。ネットの根幹に近い部分でつながる設備は常時・非常時とも専門技術者の手を介したメンテナンスが重要であり、羽田空港や新幹線・品川駅などとのアクセス性の高さが強みだ。
エネルギー供給の信頼性の高さも訴求ポイントといえる。6万6千V特高配電線2系統で受電するが、それぞれ離れたルートから引き込み、2万kVA変圧器2台も建屋内の離れた位置に配置。物理障害への冗長性を備える。
◇鉛蓄電池を採用
万一の停電時には、まず停電電源装置(UPS)が起動する。蓄電池は実績ある鉛電池。担当者は「海外では(リチウムイオン電池の)採用事例もあるが、少なくないトラブルが報告されている」と背景を説明する。
エネ密度向上とコスト低下で非常用電源への採用が増えるリチウムイオン電池だが、上位の情報インフラ基盤として慎重に技術を選ぶ。UPSが駆動する10分の間に起動するのが4500kVAのタービン発電機。所内需要の拡大に合わせ最大15台まで増設する。
既存施設の経験を生かし、省エネ設計を進化させた。これまで採用してきた冷却塔を排し、チラーの冷熱を循環利用する構造で水と電力の利用量を減らす。顧客から要望の多い使用電力の脱炭素化では、東京電力エナジーパートナー(EP)の「グリーンベーシックプラン」を活用。非化石証書による実質再生可能エネルギー100%を標準で提供する。
一層実効性の高い脱炭素施策へ向け、次の一手も。市原昌志執行役員・企画本部副本部長は「環境価値のリアルタイム性を求める声も一部の海外のお客さまから出はじめている」と述べ、CO2排出ゼロの電力の直接購入も検討を始めていることを明らかにした。
電気新聞2024年7月2日
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