昇降機大手が労働力確保に向けて対策を展開している。三菱電機ビルソリューションズ(東京都千代田区、織田巌社長)は中国の合弁会社から日本に人材をシフトし始めた。中国の不動産不況を受け、現地案件の減少に対応を図る。一方、日立ビルシステム(同区、網谷憲晴社長)は不況を見越し、2016年から中国人技能者を受け入れている。足元では保全需要の獲得に向け体制を強化している。各社は中国の即戦力を迎えて市場の変化に機敏に対応する狙いだ。(匂坂圭佑)

 三菱電機ビルは中国の関係会社から24年度、中国人技能者を日本に初めて受け入れた。織田社長が電気新聞などの取材で明らかにした。高速エレベーターの大型プロジェクトに配置した。3チームを7人で組み、全社大で3カ所の現場を追加で請け負えるようになった。

 中国のエレベーター市場は不動産不況により、「年100万台だった新設需要が70万台を下回る水準に冷え込んだ」と織田社長は話す。特に高層ビル向けのような高品質需要が減少したことを受けて、対応できる高い技能を持った人材を日本に配置転換した。東京や大阪など都心部に集中する高層ビル案件を獲得しながら、国内市場を引き続き牽引したい考えだ。

 ◇来年以降も

 織田社長は「来年以降も中国から一定数を招きたい」とし、技能者の受け入れを継続する意向を示す。中国不動産市場は21年度上期まで過熱したが、その後は調整局面が続く。人口減という構造的な課題を抱え、再びピーク時に回復するのは困難との見方もある。経営資源の適切な配置が各社に求められる。

 ◇即座に活躍

 日立ビルは16年に中国現地法人から日本国内に対し、施工技術者の派遣を始めた。事業拡大に伴う人材不足で営業活動を抑えるほどの事態に陥ったため、対策を講じた。現地で高度な技能教育を受けているため、日本で即座に活躍できる。日立ビルによると、量産系エレベーターは3年ほどで一人前になれるが、オーダーメード品を手がけるまでには10年程度の育成期間を要するという。

 日立ビルは中国不動産不況を見通し先手を打ったことで、人材余剰を回避した形だ。併せて顧客構造を見直し、民間企業から国有企業に重点を置いた。民間企業の資金調達が金融機関に厳しく制限される一方、国有企業は土地購入を増やしている。

 人口減という構造的な問題はあるものの、日立ビルは中国事業を保全分野で伸ばせると見込み、人員の補充を進める。複数の工業専門学校と提携する。経年15年以上のエレベーターが急増することで更新需要の急拡大もにらむ。事業体制とサービス競争力の強化により、収益性を高めていく戦略だ。

電気新聞2024年6月25日