CO2をアミン溶液で分離・回収して海底下に貯留する苫小牧CCS実証試験センター

◆30万トン海底に圧入 

 日本CCS調査(東京都千代田区、中島俊朗社長)の苫小牧CCS実証試験センターの視察会が、報道関係者向けに開かれた。同センターでは2016~19年度、出光興産の北海道製油所から排出される二酸化炭素(CO2)を分離・回収し、苫小牧港の海底下の地層に貯留した。現在は地層内のCO2の動きや微少振動・地震、海洋環境などをモニタリング。圧入完了後もCO2の漏えいがないことを地元住民をはじめ国内外の関係者に広く発信している。(旭泰世)

 苫小牧CCS実証試験センターは、CO2の分離・回収から貯留までを一貫して実証する施設。CO2の分離・回収はアミン溶液でCO2を吸収し、圧力差や加熱によってアミン溶液からCO2を取り出すという流れで、CO2回収率は99.9%以上に上る。

 CO2の貯留は海底下1千~1200メートルの砂岩層「萌別層」と海底下2400~3千メートルの火山岩層「滝ノ上層」で行われた。同センターの敷地から海底下に向けてパイプラインを掘削・設置し、16年4月からCO2を圧入開始。19年11月に目標である累計30万トンのCO2圧入が達成された。

 日本CCS調査の担当者は、18年9月に北海道胆振東部地震が発生した際にもCO2の漏れがなかったと強調。「実証を通じてCCSの安全性を確認できた」と述べた。

 視察会は22~23日、電気事業連合会が主催したもので、北海道電力泊発電所なども巡った。同発電所では今年3月から新たな防潮堤の設置工事が進んでいる。地中の強固な岩盤に直接支持させる「岩着支持構造」を採用。現在は岩盤を地面から掘り出す際に周囲の土が崩れないよう「土留め」の作業が行われている。このほか、同社苫東厚真発電所の隣接地に設置された水素製造設備の視察も行われた。

電気新聞2024年5月29日