◆官民で動きが活発化

 電気自動車(EV)用充電器の設置が、急速型を中心に加速しそうだ。2024年3月末時点で普通、急速合わせて約4万口が整備されたが、充電サービス事業者らが相次いで設置方針を打ち出しており、e―Mobility Power(イーモビリティパワー、eMP、東京都港区、四ツ柳尚子社長)は30年までに急速型で約1万口を整備する方針を掲げる。国も集合住宅の供給事業者に充電器を積極的に設置するよう3月に要請しており、官民の動きが活発化している。(4面に関連記事)

 経産省が示した充電器設置の推移をみると、23年3月末時点では約3万2千口(普通約2万3千口、急速約9千口)が整備された。24年3月末時点では急速で約1万口、普通は約3万口に到達。普通充電は主に集合住宅での設置が伸びた。

 順調に積み上がる中、経産省が昨年まとめた「充電インフラ整備促進に向けた指針」では、充電口数を30年までに30万口とする目標を掲げている。急速充電器の平均出力を現在の2倍となる80キロワットまで高める方針も示した。

 指針を策定した経産省の有識者会合では、充電サービス事業者らが目標の達成に寄与するべく、将来の設置目標を提示。ENEOSは急速充電器を25年度まで千基、30年度までに数千~最大1万基設置する計画を紹介した。

 これと並行して経産省と国交省が3月、集合住宅供給事業者に文書で積極的な充電器の設置を要請した。新築の場合、充電器を設置する合意形成が容易であり、工事費も既築の集合住宅と比べて抑えられるとする。このため、供給事業者には設置目標や設置方針の設定、公表も促している。

 充電器の高出力化も進む。イーモビリティパワーのデータによると、急速充電器の中でも50キロワット以上の高出力型の設置が進む傾向にあるとする。23年度の一年間で50キロワット未満が700口程度減少した一方で、50キロワット以上は2千口増えた。調べによるとディーラーやコンビニ、高速道路で高出力型に置き換える動きが進んでいるという。

 特に高速道路のサービスエリア、パーキングエリアにおいては、90キロワット以上の機種が増加。高速道路全体に占める90キロワット以上の機種の割合は22年度は25%だったが、23年度は44%まで伸びた。

 充電器の設置はEVユーザーの利便性向上につながる。電欠の不安も減ればEVの拡大にもなるが、電力系統の負荷の偏りが課題となる。経産省としては適正な充電インフラの整備策も検討し、EVの広がりと電力の安定供給を両立させる考えを示す。

電気新聞2024年5月10日