予想問題を解説する講義

◆社員による対面講義/実務情報豊富、設備見学も

 沖縄電力が新規事業として始めた第3種電気主任技術者試験(電験3種)対策講座が、実績を上げている。2023年度下期の試験では、合格に必要な全科目で受講生の合格率が50%を上回った。実務経験の豊富な沖縄電力社員を中心に展開する対面講義や、実際の電力設備を見学する特徴的なカリキュラムが合格に結び付いている。不足が懸念される電気主任技術者の確保につながる取り組みとして注目される。

 電験3種対策講座は23年から始めた。年2回の試験に合わせ、上期と下期に分けて開講する。「理論」「電力」「機械」「法規」の4科目全てを取り扱い、生徒は必要な科目を選んで受講できる。講義は各回2~3時間程度で、週1回実施。23年度下期は、大学生や社会人の合計約30人が受講した。

 ◇一定の緊張感で

 23年度下期の各科目の受講生合格率をみると、「理論」は55.6%、「電力」は66.7%、「機械」は78.6%、「法規」は75.0%だった。いずれの科目も全国の合格率は3割程度。受講生の合格率は高い水準にあるといえる。

 「一定の緊張感を持って学べるため、(学習内容の)吸収が良いということをとても実感している」。講師を務める沖縄電力の金城史尚・送配電本部電力流通部次長兼流通業務グループ長は、対面講座の利点を指摘する。

 通常の講義に加え、30分程度の「実務講義」も特徴の1つ。実務講義では主に沖縄電力の社員が発電や配電といった分野に関する情報を提供するほか、電気主任技術者が仕事の中身を説明する。また、沖縄電力の発電所や送配電設備を見学できる機会も用意し、単に試験合格を目指すだけでなく、電気事業そのものへの理解を深めてもらう工夫を重ねている。

 ◇試験問題が的中

 講座では、取り扱った題材が実際の試験に出題される「的中」事例も出ている。23年度下期の講座では沖縄電力の牧港火力発電所を受講者が見学。その後実施された23年度下期の「電力」の試験では汽力発電所の復水器に関する出題があり、見学会で説明のあった内容と大きく重なったという。このほか「機械」の科目では直前に扱った予想問題とほぼ同一の内容が出題された。

 大手電力が自ら、電験3種対策講座の開設に乗り出す事例は珍しい。沖縄にある電気工作物は電験3種で取り扱える電圧5万V未満のものが大半を占めるため、電験3種の取得者層の厚みが増す意義は大きい。金城氏は、講座を短期的な事業とせずに「継続して取り組んでいく」と話している。

電気新聞2024年5月15日