◆ビル、工場向けで成長見込む/特高用は対象外

 日立産機システムは5日、三菱電機から配電用変圧器事業を買収すると発表した。ビルや工場などの受変電設備向け変圧器を対象としている。配電用変圧器は環境性能の改善要求などを追い風に市場拡大が予想される。日立産機は三菱電機の資産を取り込み成長を目指す。

 買収金額は非公表だが、三菱電機の配電用変圧器事業の売上高は年百億円程度としている。日立産機によると同事業の国内市場は約600億円規模。同社と三菱電機、東芝グループ、ダイヘンの4社でシェアを分け合う。買収後は3強体制になる。

 日立産機は中条事業所(新潟県胎内市)の生産設備を整備する。三菱電機の名古屋製作所(名古屋市)から利用できる生産設備を段階的に移す。資産譲渡を10月から始める。三菱電機の知的財産を得るほか、顧客基盤を引き継ぐ。日立産機は三菱電機の関連事業の人員を引き受ける用意をするが、両社の協議次第としている。

 三菱電機は名古屋製作所で、同社が主力とするFA(工場自動化)制御機器を製造している。同社は配電用変圧器の生産設備を譲渡した跡地で、FA機器の生産設備の増強を検討する。素材価格の高騰などで収益性が悪化していた配電用変圧器事業を売却し、重点領域のFA事業に集中投資する戦略だ。同社は赤穂工場(兵庫県赤穂市)で電力会社向けに特別高圧の変圧器を製造しているが、今回の売却対象には含まれない。

 日立産機は配電用変圧器で成長を目指す。省エネ法のトップランナー方式により、2026年度に配電用変圧器のエネルギー消費効率を19年度比で11.4%高める目標が掲げられている。三菱電機の技術を融合し、環境配慮品のニーズを取り込む考えだ。脱炭素化の潮流を受けた再生可能エネルギーの普及や、デジタル化に伴うデータセンターや半導体工場の増設も市場を押し上げると見る。

電気新聞2024年4月8日