勝野哲・電気事業連合会会長
勝野哲・電気事業連合会会長

 電力システム改革が段階的に進められる中、電気事業連合会の勝野哲会長は「今年は送配電部門の法的分離を2020年度から円滑に実施するための“仕上げの年”」と位置付ける。同時に、昨年の自然災害への対応を踏まえ、「送配電部門の分離後も“安定供給マインド”をしっかりと引き継いでいかなければならない」と訴える。社会や電気事業の構造が大きく変わる中で「我々も広い視野と変革の意思を持って業務に取り組むことが大切」と呼び掛ける。
 

◇災害の猛威


 
 ――2018年を振り返ると。

 「台風や地震など自然災害が相次ぎ、各地で大きな被害を受けた年だった。全国の広い範囲で長時間の停電が発生したことについて、あらためておわび申し上げたい。一方で、20年の送配電部門の法的分離を控え、電力インフラのさらなる強靭化に向け、従来の取り組みを総点検する良い機会になった。第5次エネルギー基本計画も閣議決定された。我々としてはエネルギーミックス(30年度の電源構成)の実現に向け、主力電源化を目指す再生可能エネルギーの導入拡大や原子力発電所の再稼働など、足元の取り組みを加速することが重要だと考えている」

 「原子力産業界全体で安全への課題を解決するため、『原子力エネルギー協議会』(ATENA)も設立された。安全性向上の取り組みのさらなる高みを目指す上でも、大変意義深いと受け止めている。原子力発電所は9基が再稼働した。引き続き安全確保を最優先に、安全・安定運転に万全を期したい」
 

◇仕上げの年


 
 ――19年の抱負や期待を。

 「今年は送配電部門の法的分離を20年度から円滑に実施するための“仕上げの年”となる。今後、様々な市場が整備されるが、一つの電源から提供するそれぞれの価値がきちんと市場で取引され、全体として継続的な事業運営ができる仕組みとなるよう、実務に関わる観点から検討に積極的に協力していきたい。原子燃料サイクルについては、現工程での竣工を目指し、日本原燃が再処理工場などの新規制基準適合性審査や安全対策工事に全力で取り組んでもらいたい。我々もしっかりと支援していきたい」

 ――電力インフラのレジリエンス(強靱性)が注目されているが、将来的な安定供給の確保をどう考えるか。

 「20年以降も一般送配電事業者には周波数維持義務があるが、それは予備力・調整力を含めた需給が確保されていることが前提だ。容量市場、需給調整市場が果たすべき機能も含め、エリア単位、全国規模で予備力・調整力などをどう確保していくのかを考えていく必要がある。将来的に電力需給の構造が大きく変わる中では、電源だけでなく、基幹系統と配電系統の在り方など系統のポートフォリオも重要になる」

 ――電力業界で働く人たちへのメッセージを。

 「まずは昨年相次いだ自然災害への対応について、労働環境が悪い中、昼夜を問わず、電力会社や関係会社、協力会社が一丸となって復旧作業にあたって頂いたことに感謝申し上げたい。特に、高圧発電機車など他社応援が会社間の協力で行われたことは非常に心強いと感じた。『電力の安定供給』は我々の基本的な使命であり、その期待は高まっている。送配電部門の分離後も“安定供給マインド”をしっかりと引き継いでいかなければならない。また、デジタル技術の活用などによって社会・経済や電気事業の構造が大きく変わる中で、我々も広い視野と変革の意思を持って業務に取り組むことが大切だ。電気事業に携わる者として、高い使命感と責任感を持ちながら、新たな時代への変化にしっかりと対応して頂きたい」

電気新聞2019年1月1日