現存が確認された「地電気自記器」
現存が確認された「地電気自記器」

 日本の電気工学の祖といわれる志田林三郎(1855~92年)が考案した電流を“見える化”する機械の一部が現存していることが、国立科学博物館と出身地の多久市郷土資料館(佐賀県)の共同調査で分かった。この機械は「電気の強弱方向を自記する新器械(地電気自記器)」と呼ばれる。地中を流れる地電流を計測し、波形として表す機械式オシログラフの一種だという。

 志田は地電流の変動を観測することが電信技術の発達に必要として、実際に測定した。地震の予測などに貢献する地球物理学の研究にも役立つと考えていたという。

 1885(明治18)年に「工学会誌」で地電気自記器の論文を発表した。当時、電流の波形をリアルタイムで観測するのは難しく、日本の電気技術史上、極めて重要な発明とされる。

 科学博物館は2016年度から、各研究機関と連携して科学・技術史資料の調査プロジェクトを手掛けている。その一環として、多久市郷土資料館と共同で同館所蔵の計測器を調査し、そのうちの一つが一部欠品した地電気自記器であることを確認した。

 現存していた地電気自記器は逓信省工務局製で、志田が同局長を務めていた時期と重なる。基本的な原理や構造、改良を加えた箇所が志田の論文と一致することなどが確認の決め手になったという。

 多久市郷土資料館は明治維新150年を記念して16日から開く志田の特別企画展に、この機械を展示する。志田は明治初期に活躍した電気工学者で、わが国第1号の工学博士。電気学会の設立など日本の電気工学の礎を築いた。

電気新聞2018年12月13日