◇品質改善へ試験デジタル化
電力の安定供給に欠かせない変圧器やガス絶縁開閉装置(GIS)。三菱電機の系統変電システム製作所はこれらの開発、生産を担う。80年以上にわたる製品の供給実績があり、世界各国の電力供給の現場で運用され信頼を得ている。一方、2022年に同製作所の赤穂工場で変圧器検査の不適切行為が発覚。4月に就任した同製作所の阿部公輔所長の指揮下で、検査体制の見直しや組織風土改革を進めている。
系統変電システム製作所は神戸市、兵庫県尼崎市、赤穂市の3拠点で構成される。主な事業範囲は変圧器や電力系統の保護・制御・監視システムなど。GISは国内でトップクラスのシェアを誇る。
◇「忠臣蔵」ゆかり
変圧器を主に手掛ける赤穂工場までは大阪駅から電車と車を乗り継いで約2時間。「忠臣蔵」で知られる地域には、四十七浪士の墓、邸宅跡などゆかりの史跡が数多く残る。江戸時代には入浜塩田の開拓が進められ、「塩の国」としても知られている。工場の敷地面積は約24万平方メートル、甲子園球場約6個分に及ぶ。
多くのメーカーがコイルの中に鉄心を配置した「内鉄形」の変圧器のみ扱う中、三菱電機はコイルの外側に鉄心を配置する「外鉄形」を手掛け、日本で唯一両タイプを生産している。外鉄形は高電圧・大容量が特徴で、発電所や変電所に用いられる。機械的強度に優れていることから新幹線にも搭載されている。
赤穂工場での変圧器検査の不適切行為により、昨年7月には系統変電システム製作所全体の品質管理の国際規格「ISO9001」認証が一部取り消されたが、今年10月に再認証を受けた。不正行為に及ぶ余地をなくす仕組みの一環として、これまで目視でデータを取っていた変圧器試験の部分放電測定をデジタル化。測定ミスなどを防ぐことで品質管理の精度を高めた。試験の要領書や成績書を自動制作するツールの開発も進めており、24年度に完成する見込みだ。
◇設備増強を検討
阿部所長は工場の生産性を上げるために設備増強を検討し、刻々と変化する電力事業環境に対応する考え。特に再生可能エネルギーが拡大していることから、系統安定に寄与する機器の需要が伸びるとみる。電力インフラの支え手として「カーボンニュートラルに貢献する変電機器全般を扱うことに重責を感じている。顧客のニーズに合った生産設備でモノづくりをしていきたい」と熱意を語る。(随時掲載します)
◆取材後記
GISを製造する伊丹工場(兵庫県尼崎市)は、系統変電システム製作所で造られた製品の検証試験設備を完備する。高電圧や震動、寒冷・熱帯気候など過酷な環境でも耐えられるかを検証でき、赤穂工場製の一部製品も設備を活用しているという。海外で採用された電力機器も多数あり、同社技術への評価の高さが伺える。世界の顧客の期待に応え続けるため、着実に改革を進めてほしい。(西部総局・成田茉由)
電気新聞2023年12月20日
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