電力中央研究所は、太陽光発電設備の翌日の出力予測を高精度化する手法を開発した。機械学習を導入するとともに、気温や湿度といった日射量以外の情報も考慮した手法を確立。従来手法と比較して、精度を最大1割程度高めることに成功した。一般送配電事業者が自社の予測システムに開発した手法を適用することで、精度の良い出力予測が可能になり、電力系統の安定性向上につながることが期待できる。

 新手法の名称は、「機械学習を用いたPV予測手法」。2021年から開発を始め、23年10月に成果を報告書として公開した。

 太陽光の出力予測について、従来手法では過去の日射量予測と出力実績のデータのみを使って「変換モデル」を構築。このモデルに気象庁の予報データを入力することで出力を予測していた。

 一方で、発電量には温湿度などの気象要素や設備の設置条件といった様々な要因が関係してくるため、同じ日射量でも出力実績のばらつきが大きく、従来手法では精度に課題があった。

 そこで電中研は精度向上を目指し、2種類の機械学習を用いた新たな変換モデルを構築した。過去の気象予報データに気温や湿度、雲量といった日射量以外の要素を追加。その上で、これらの要素と出力実績が持つ関係性を「ランダムフォレスト」「勾配ブースティング決定木」と呼ばれる機械学習を通じて分析させ、精度の高い予測を可能にした。

 開発した新手法は、各一般送配電事業者のエリア単位での出力予測に対応。翌日だけでなく、当日や翌々日向けの予測にも適用できる。

 中国エリアを対象として、20年の1年間の出力を予測した精度検証も行った。検証では、翌日の出力予測誤差が最大で9.8%減少したほか、年間を通じて最も精度が低かった時間を指す「大外れ時」の誤差も12%減少した。曇天時の精度向上、朝~昼過ぎに発生していた発電量の過大予測傾向の改善といった効果も確認できた。

 また、変換モデルが予測を行う過程についても分析。日射量や気温といった変数が予測結果にどの程度影響を与えたかを数値で示せるようにし、その結果に至った根拠を説明できるようにした。

 開発者の電中研サステナブルシステム研究本部気象・流体科学研究部門の菅野湧貴主任研究員は、一般送配電事業者などに今回の成果を「需給バランスの安定性向上に向けた選択肢として活用してもらえれば」と話す。

電気新聞2024年1月16日