一般送配電事業者9社と送配電網協議会は26日、需給調整市場の運営を担う一般社団法人を同日付で設立したと発表した。同市場は2024年度に3商品が追加され、全てを取引できるようになる。これまでは任意団体が運営してきたが、法人化することで責任の所在を明確にし、意思決定の迅速化につなげる。4月1日から事業を開始する。

 名称は、「電力需給調整力取引所(EPRX)」で従来と変わりはない。代表理事には4月1日付で送配協需給調整市場運営部の福元直行部長が就く。沖縄電力を除く一般送配電事業者9社が社員となる。各社は基金を拠出するが、具体的な金額は非公表。事業運営費は売買手数料で賄う。

 代表理事のほか、9社の部長級が理事を担い、弁護士が務める監事も選任する。これまで通り、東京・大手町の経団連会館内に事務所を置く。現在の送配協市場運営部は職員11人を含め新法人の事務局に移管する。24年度以降、順次増員も検討していく考えだ。

 EPRXは21年3月に任意団体として発足し、市場運営業務を担ってきた。会員の申し込み受け付けや、問い合わせ対応など一部の共通業務は送配協市場運営部が受託。取引情報のデータなども送配協のホームページ(HP)で公表していた。

 24年度以降、需給調整市場では全ての商品を取引できる環境が整う。新法人を設立することで、市場を安定的に運営し、透明性・中立性を確保。システムトラブルなどにも柔軟に対応できるようレジリエンス(強靱性)の向上を図る。体制の強化を巡っては、経済産業省・資源エネルギー庁からも必要性が指摘されていた。

 事業開始を前に独自のHPを3月中にも開設する予定だ。福元氏は「24年度は需給調整市場をはじめ、電力システム全体が一つの区切りを迎える。透明性を高め、魅力ある市場づくりを進めるとともに、法人としての責任をしっかり果たしていきたい」と話す。

 ◇メモ/5商品を展開

 需給調整市場は指令を受けてからの反応速度(応動時間)などに応じて5つの商品に分かれる。2021年度にまずは最も低速の3次調整力(2)から取引を開始し、22年度には3次(1)を追加した。それまでは一般送配電事業者が専用で使う「電源I」、小売電気事業者の供給余力などを活用する「電源II」といった区分けをし、エリアごとに公募で集めていた。

 24年度から1次~2次(2)が加わり、これにより商品ラインアップがそろう。需給調整市場で確保しきれない事態に備え、容量市場での調達、ゲートクローズ後に余った調整力を使用する余力活用契約といった仕組みも整えた。従来の調整力公募は沖縄エリアを除き終了する。

 需給調整市場開設後は応札量が募集量に満たない未達が常態化している。今後も続けば、調達価格の高騰を招いたり、安定供給に支障を及ぼしたりする恐れもあり、電力広域的運営推進機関(広域機関)は調達の効率化や前日取引化などの検討を進めている。

電気新聞2024年1月29日