電力設備の強靱性(レジリエンス)確保策を検討する経済産業省の作業部会は25日の会合で、北海道でのエリア全域の大規模停電(ブラックアウト)の発生原因と北海道電力の過去からの設備形成・運用方針との関連性を検証した。経産省は、電源立地の分散と調整力の確保を進めてきた北海道電力の経営判断に、ブラックアウトのリスクを高めるような不合理性はなく、発災時に苫東厚真発電所3基を同時運転していたことはメリットオーダーの観点から不適切とはいえないとする評価案を示した。

 電力レジリエンスワーキンググループ(WG、座長=大山力・横浜国立大学大学院教授)の第2回会合では、経済性も含む総合的な観点から、事務局が北海道電力の設備形成・運用に対する評価案を示した。委員から大筋で異論は出なかった。

 経産省の評価案は、苫東厚真発電所への“一極集中”がブラックアウトを招いたとする一部の主張に反論した形だ。

 経産省は北海道電力が東日本大震災の後、大規模な電源脱落リスクに備えて京極発電所(揚水)の運転開始、石狩湾新港発電所(LNG火力)の建設決定、北本連系設備の増強決定を行い、電源の立地分散と調整力確保を図ったと指摘。来春までの石狩湾新港1号機の運開と北本連系設備の30万キロワット増強で、供給源と供給ルートの多重化も進むとした。石炭火力の苫東厚真発電所は、割高な電気料金を是正する観点などから建設を進めてきたとした。

 また、ブラックアウトの「複合要因」とされた苫東厚真3基の脱落と、水力停止の原因になった送電線4回線の地絡事故は、火力の耐震設計基準や保安規制を逸脱したために起こったものではないとの認識を示した。

 25日の会合は、電力広域的運営推進機関(広域機関)の第三者委員会がブラックアウトの原因と再発防止策の中間報告をまとめたことを受け、当初のスケジュールを変更して設定した。広域機関は会合で中間報告の概要を説明。北海道電力も苫東厚真3基の脱落と送電線事故の状況・復旧対応を説明した。次回の会合は11月上旬に開かれ、ブラックアウトを踏まえた全国の発電・送配電設備の緊急点検結果などを議題とする見通し。

電気新聞2018年10月26日