地下駐車場でエレベーターに電源を供給するEV
地下駐車場でエレベーターに電源を供給するEV

 三井住友建設はこのほど、電気自動車(EV)から電源を供給してタワーマンションのエレベーターを稼働させる実証実験を行った。東京海洋大学と共同で開発した電源供給システムを使えば、エレベーターを最下層階から最上階まで100往復させられることを論理的に実証した。今後はマンション管理組合や自治会向けにカーシェアリングやエレベーター遠隔監視サービスとの提携、災害時の電源確保などへのサービス体制を構築し、事業化を進める。

 両者が稼働実験で用いた「陸・海電力コネクティングシステム」はEV、EVから供給される単相電源を三相電源に変換する「変換装置」、エレベーターに供給する電力やEVの充電量を計測する「モニタリング装置」で構成。大規模災害時、EVを使って船舶の電源を内陸部へ輸送することを想定してつくられたものだ。

稼働実証を行った「リバーシティ21イーストタワーズII」
稼働実証を行った「リバーシティ21イーストタワーズII」

 両者は2017年6月、横須賀市役所久里浜行政センターで同システムを用いたエレベーターの稼働実証を実施しているが、この建物は3階建て。今回の稼働実証は三井住友建設が施工した地下2階・地上43階建てのタワーマンション「リバーシティ21イーストタワーズⅡ」(東京都中央区)で行った。

 稼働実証では船舶を使わず、フル充電した日産のEV「リーフ」から電源を供給。マンションの1階エレベーターホールにモニタリング装置を設置した上で、地下2階から地上43階(高さ約130メートル)までエレベーターを往復させた。要した電力量は「理論値ではあるが34キロワット時」(三井住友建設)だった。

 建築物の停電時は、建物機能の維持に加えて利用者・入居者の安全確保が求められる。だが建物に設置される非常用発電機は防災設備への電源供給を主体としており「保安電源用として発電機を整備している建物は多くない」(三井住友建設)。

 戸建て住宅では非常用発電機に頼らない緊急時の電源供給として、V2H(車から宅内への給電)が普及しつつある。それでも供給できる電源は単相200V、100Vであり、三相電源が必要なエレベーターを稼働できないことはマンションの災害時対応における課題とされている。

電気新聞2018年10月10日