◆実データ扱う強みを発揮
三菱電機が、スマートエナジー(東京都港区、大串卓矢社長)主催の「第1回太陽光発電量予測AIコンペティション」で、最高位の総合予測賞に選ばれた。提供された発電量実績から、異常値とみられるデータを手作業で地道に除外し、機械学習を進めることで予測精度を高めた。三菱電機の機械学習技術グループ専任の吉村玄太氏は「泥臭くはあるけれど、(高精度な予測には)大事な工程だった」と振り返る。(匂坂圭佑)
◇限られた情報で
コンペは7~8月の1カ月弱、スマートエナジーが実際に保有する3カ所の太陽光発電所を題材に行われた。出場チームが毎日発電量を予測する。三菱電機の予測誤差は28.9%で、2位チームの34.5%に差を広げる好結果だった。
出場チームは事前に2021~22年の発電量データを参照できたが、直近23年のデータはなし。7月の予測開始後も発電量実績は知らされず、予測との乖離(かいり)状況が分からないまま進められた。競技途中の8月に発電量実績が公開されたが、各チームとも実際の発電所運営より限られた情報での予測を強いられた。
三菱電機のチームは機械学習の研究者6人で構成した。AI(人工知能)による時系列予測などを主に扱っている。工場自動化(FA)のモーター制御や、ビル用空調の自動制御などに技術が生かされてきたが、太陽光の専門家は不在。ただ、発電量予測は時系列と関係が深く、自己研さんも兼ね参加した。
◇人手でしっかり
三菱電機は、本番に近い状況を再現するため、7~8月の提供データを検証に活用しながら予測モデルを作り込んだ。提供データ中の自由記述項目に「警報」などと書き込まれ、異常が疑われる発電量データを除外し、予測精度を高めた。
三菱電機の機械学習技術グループマネージャーの杉原堅也氏は、大学のAI研究者と比較しながら「我々企業の研究者は様々なノイズが含まれる実データを扱い、注意深く見ながら対処することを得意としている」「泥臭いことを毎日やっている」と自負する。吉村氏は「異常検知はAIでも研究開発するが、人手でしっかりやることも大事」と話す。
コンペでの優勝をきっかけに、社内から協力要請が舞い込んだという。太陽光の発電量予測関連ビジネスにも生かされることが期待される。機械学習技術グループの伊藤凜氏は「メーカーに所属しているので、製品に寄り添った技術や、工場の操業や生産に関する問題を解決できる技術を開発したい」と抱負を語った。
電気新聞2023年11月27日
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