北海道でのエリア全域の大規模停電(ブラックアウト)について、復旧作業の詳細が明らかになった。10月9日に開催された電力広域的運営推進機関(広域機関)の検証委員会で、9月6日午前3時25分の全域停電後から9月8日午前0時13分に一般需要(負荷)への送電を完了するまでの約45時間の事象が時系列で示された。北海道電力が1回はブラックスタートに失敗し、2回目で成功したことが明らかになったが、検証委は失敗原因の予見は難しく、失敗しなくても復旧時間は数時間程度の短縮が限度だったと指摘。北海道電力による復旧手順はおおむね妥当だったと評価した。

 全域停電からの復旧には、まず非常用バッテリーなどで起動できる電源(発電所)を立ち上げる。これをブラックスタート機能を持つ電源と呼ぶ。同電源を種火に、需給バランスを保ちながら徐々に送電区域を拡大することが必要になる。

 道内全域が停電してから35分後の9月6日午前4時に、北海道電力はブラックスタート機能を持つ揚水式の高見発電所1号機(定格出力10万キロワット)を並列した。他の発電所の所内電源確保へ作業を進め、苫東厚真発電所1、4号機の起動も試みたが断念。午前6時19分に泊発電所3号機の変圧器に送電し、その2分後の21分に全発電所が停止した。変圧器への送電時に大電流が流れ、その波及事故が停止の要因。検証委は「大電流の発生が系統に与える影響の予見は困難」と評価した。

 2回目は9月6日午前6時半に同じブラックスタート機能を持つ揚水式の新冠発電所1号機(同10万キロワット)を並列。基幹送電線への送電、発電所の起動を順次進めた。

 同日午後1時には泊発電所の所内電力を外部電源に切り替えた。火力は1時35分に砂川発電所3号機を並列し、供給力を確保。北本連系設備は7日午前5時半に融通電力の受電を始めて、8日午前0時に60万キロワットのフル受電を開始した。0時13分の釧路エリアへの送電をもって、一般需要への送電を完了した。

電気新聞2018年10月10日