1日に都内で開かれた賠償廃炉機構運営委員会

 原子力損害賠償・廃炉等支援機構(賠償廃炉機構)の運営委員会(委員長=伊藤邦雄・一橋大学大学院名誉教授)は1日に都内で会合を開き、東京電力ホールディングス(HD)の経営改革に対する評価結果を取りまとめた。福島第一原子力発電所事故の賠償費用上振れを見込み、JERAと同規模の包括的アライアンスなどによる収益拡大が必要と提言した。賠償廃炉機構と東電HDは提言を踏まえ、次期総合特別事業計画を検討する。

 提言では、賠償の資金援助額が2024年度にも交付国債枠の13兆5千億円に達することを受けて、交付国債の増額が必要と指摘。村瀬佳史・経済産業省・資源エネルギー庁長官は、24年度予算案に増額分を盛り込む方針を運営委員会で示した。

 賠償と廃炉に年間5千億円を捻出する取り組みについては、提言の中で柏崎刈羽原子力発電所の再稼働が資金確保に「特に重要」とし、信頼回復やさらなる地元貢献策の必要性を説いた。

 長期的に年間4500億円規模の利益を創出する取り組みでは、JERAのような基幹事業会社単位での包括的アライアンスが実現していない点を課題に挙げた。

 提言は、包括的アライアンス実現に「強い覚悟」で挑むよう求めるとともに、自律経営を担保するための工夫が必要と強調。これに関して、賠償廃炉機構連絡調整室長の吉野栄洋・東電HD取締役・執行役は「具体的なやり方はいろいろあるので、パートナーと議論する際に必要な手を打っていく」と述べた。

 東電HDの小早川智明社長は1日の会合にリモートで参加した。提言を「真摯に受け止める」とし、「私が先頭に立ち大胆な改革の実行に全力を尽くす」とコメントした。

電気新聞2023年12月4日