細井 社長

◆ポートフォリオを多角化

 東洋エンジニアリングの細井栄治社長は24日、電気新聞の取材で「新地域としてチリに進出したい」と述べ、事業拡大への意欲を示した。太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーの適地として有望なチリで、グリーンアンモニア事業への参画を狙う。すでに同国内で複数の計画に参画しており、より大規模な事業を手掛けることで本格進出につなげる考え。同社は特定地域、大型案件に依存しないポートフォリオの多様化戦略を進めており、経営安定化の意義もある。

 チリは2030年までに電源構成の8割を再エネにする計画を掲げる。22年時点で55%とすでに高く、水力を筆頭に太陽光、風力が普及する。各国企業が進出しており、独ポルシェなどによる合成燃料事業「ハルオニ」は象徴的な案件だ。

 東洋エンジは「グリーン電力大国」(細井社長)のチリで、グリーンアンモニアの国際実証を進めている。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援を受け、三井物産と共同で太陽光の電力から水素をつくり、アンモニアを製造する。年産1万8千トンの設備を25年に建設する計画で、基本設計(FEED)まで進んだ。製造したアンモニアは、同国内で鉱山を開発するための爆薬に用いる。

 将来は商業規模の年産70万トンのグリーンアンモニアプラント建設を目指す。チリ国内消費を念頭にした計画だが、細井社長は「大規模化すれば、地理的に近い日本への輸出も十分考えられる」と展望する。

 東洋エンジの細井社長は「他にも商社と共同で風力からグリーンアンモニアを製造する協議をしている」と明かした。製紙会社とも案件を仕込む。細井社長は「何らかのプロジェクトで先が見えてくれば、現地事務所を構えることもあり得る」と話す。東洋エンジはベネズエラとブラジルに事務所を持ち、チリの拠点設立について南米での知見を踏まえ検討する。

 東洋エンジは、受注活動で大型案件を狙わず、幅広い地域で積み上げる戦略をとる。細井社長は「ウクライナ危機やガザ戦闘などあらゆることが世界で起こる中、特定の地域・プロジェクトに会社経営を依存するのが難しい時代になっている」と指摘。「採算性の高い案件を様々な地域で獲得することで経営を安定化させる」と方針を語る。

電気新聞2023年11月30日