政府は、全国の重要インフラを対象とした緊急点検を月内に開始する。西日本豪雨や台風21号、北海道胆振東部地震など相次ぐ自然災害を受け、電力分野では火力発電所や送配電設備、太陽光・風力発電設備などを調査。経済産業省が発電設備の技術基準への適合性、資源エネルギー庁が電力システム全体の供給安定性などをそれぞれ確認する。結果は11月末までに取りまとめ、「国土強靱化計画」の年内の見直しに反映させる。

 緊急点検は他分野を含め、計118項目が対象。経産省、国土交通省、環境省など11府省庁で連携して進める方針だ。電力分野では近く事業者を集めた会合を開き、具体的な内容を詰める方向で調整している。

 北海道胆振東部地震では、道内全域での大規模停電(ブラックアウト)が発生した。緊急点検では、このような非常時のリスク・被害を極小化させる観点から調査を進める。発電所・送配電設備に関しては、電力広域的運営推進機関(広域機関)に設置された検証委員会の作業を踏まえる。

 一方、台風20号の影響で発生した兵庫県淡路島での風力発電設備の倒壊事故では、基礎の強度不足が原因となった可能性がある。このため、全国の出力20キロワット以上の事業用風力約2300カ所を対象に、基礎構造の重点調査を行う。

 また、太陽光パネルの倒壊も相次いだことから、西日本豪雨の被災地域に立地する50キロワット以上の太陽光発電設備2千~3千カ所で状況を把握。蓄電池を含め劣化・破損の状況、災害時でも機能が維持できるかも確かめる。市街地を通る国道や都道府県道など計26万キロメートルで、災害発生時の電柱の危険度・影響度を詳しく見る。

 緊急点検の結果を踏まえ、政府は「国土強靱化基本計画」を年内に改定する。同計画はインフラ整備を巡る国の指針を示すもので、2014年に初めて策定された。内容は「おおむね5年ごと」に見直される。

電気新聞2018年10月5日