試運転中のGPI石狩湾新港洋上風力

◆「国内初」「最大」尽くし、全14基が試運転

 再生可能エネルギー発電事業者のグリーンパワーインベストメント(GPI、東京都港区、坂木満社長)が北海道の石狩湾新港沖合に建てた出力11万2000キロワットの洋上風力発電所が、来年の元日にも営業運転を始める。今年9月に風車全14基の設置工事を完了。11月上旬から始めた全基の試運転を12月末まで続ける。28日の報道公開で瀬谷和彦・建設工事事務所プロジェクトマネージャーは「計画通りに進んでいる」と順調さをアピールした。(北海道支局長・山下友彦)

 北海道小樽市と石狩市にまたがる石狩湾新港沖の洋上風力は「国内初」「最大」尽くしの象徴的なプロジェクトだ。事業主体はGPIが設立した合同会社で、2020年に陸上の送変電設備の工事を開始。22年に沖合約1.6キロメートルの約500ヘクタールの海域で風車の基礎工事を始めた。

 基礎は国内初の4本足のやぐらの形状(ジャケット式)で、日鉄エンジニアリングが施工した。鋼管杭を地中に打ち込んで固定しており、波や地盤の影響を受けにくい。

 一方、風車の組み立てには、清水建設が保有する世界最大級の自己昇降式作業台船(SEP船)を動員。今年夏の2カ月で全14基の工事を終えた。風車はスペインのシーメンス・ガメサ・リニューアブル・エナジー製で、単機出力は稼働時点で国内最大の8千キロワット。総出力11万2千キロワットも稼働時点で洋上風力として国内最大規模となる。

 風車の出力変動をならし、安定した電力を系統に送る目的で、東芝三菱電機産業システム(TMEIC)が構築した容量18万キロワット時の大型蓄電システムも陸上に置いた。42台のコンテナに、韓国のサムスンSDI製のリチウムイオン電池セルを約2万4千個格納している。将来は余剰電力から水素を製造・供給することも視野に入れている。

 石狩湾新港の洋上風力事業には北海道電力も協力した。19年度にGPIと技術支援などに関する連携協定を締結。土木・電気分野のエンジニアを派遣するなどした。

 洋上風力の発電電力はFIT(固定価格買取制度)を活用し、1キロワット時当たり36円で北海道電力ネットワークに20年間売る。総事業費は800億円程度とみられるが「36円の売電価格で採算は取れる」(瀬谷氏)としている。

 石狩湾新港沖合では、丸紅など10事業者がそれぞれ大規模洋上風力の建設計画を公表しており、GPIの洋上風力はその先べんとなる。

電気新聞2023年11月30日