計画が中止になった、ニュースケールのSMRを採用した発電所(完成予想図)

 米ニュースケール・パワー社は8日、小型モジュール炉(SMR)建設で初号機となる予定だった米国アイダホ州の計画を中止したと発表した。発電事業者のユタ州公営共同電力事業体(UAMPS)から計画継続の同意を得られなかった。コスト増加が要因とみられる。SMRは次世代原子力の一つとして注目され、ニュースケールは米国での規制認可取得で先行したが、足踏みを迫られた。

 中止したSMR計画は「カーボンフリー電力プロジェクト(CFPP)」で、米エネルギー省(DOE)のアイダホ国立研究所に建設する計画だった。7万7千キロワットのモジュール炉6基で構成し、出力は46万2千キロワット。2029年に米国初のSMRとして運転を開始する予定だった。

 ニュースケールは他社に先駆け、米国原子力規制委員会(NRC)から型式認定を受けていた。この実績を評価し、21年に日揮ホールディングス(HD)が4千万ドル、IHIが2千万ドルを相次ぎ出資した。22年に国際協力銀行(JBIC)が1億1千万ドルを出資。23年9月には中部電力が出資契約を結んだ。各社は技術力の維持や新型炉の知見獲得を狙った。

 SMRを運営するUAMPSは、ユタ州やアイダホ州など7つの西部州の会員公共電力会社にエネルギー供給を手掛ける。米デザレット・ニュース社は事業継続に必要なUAMPS会員メンバー80%からの同意という条件を満たせなかったと報じた。売電先を確保できなくなり、ニュースケールとUAMPSは計画中止で合意した。

 ニュースケールは1月、インフレや鋼材価格の上昇により、初号機の1メガワット時当たり発電コストが当初計画より53%増の同89ドルに膨らんだと発表した。建設費が75%増の93億ドルに上がった。

 ニュースケールは、ペンシルベニア州とオハイオ州の2カ所で計184万8千キロワットのSMRを29年に建設する計画も抱える。IHIは「ニュースケールは米国やルーマニアなどの計画を進めており、状況を注視する」としている。

 日揮HDの石塚忠社長は9日の決算会見で、中止について「正直、驚いた」と率直に語った。その上で「次の案件もあるので、引き続きニュースケールを支援していきたい」と述べた。

電気新聞2023年11月10日