◆1500Vループ系統を整備
NTTアノードエナジー(東京都港区、岸本照之社長)と金沢工業大学は2日、同大扇が丘キャンパス(石川県野々市市)に構築した「直流自営線網」の本格運用を始めた。太陽光発電の電力を直流のまま構内のLED照明やサーバーなどに送る設備で、交流変換時に生じるロスをなくして再生可能エネルギー由来の電力を効率的に活用する。得られた知見を生かし、他地域にも直流自営線網を広げていく考えだ。
両者は本格運用を機に、共同研究拠点「KIT×NTT―AEスマートエネルギーラボ」を扇が丘キャンパス内に開設した。同日はNTTアノードの岸本社長らが出席し、現地で開所式を開催。新拠点の所長に就いた同大の泉井良夫教授は「産学共創を通じ直流による電力流通システムの社会実装に取り組む」と意気込みを述べた。
直流自営線網では、太陽光パネルを新設したほか、1500Vのループ系統、380V系統の自営線を整備した。ループ系統を持ち、2つの電圧を組み合わせた大規模な直流自営線網は国内初という。
太陽光の直流電力は、構内のLED照明やサーバー、電気自動車(EV)充放電器、空調・換気設備などに用いる。夜間などは併設した蓄電設備から電気を送るほか、既存系統の交流電力を直流に変換して供給する。既存系統の停電時は、構内の避難所へ自立的に電力供給を続けることも可能だ。
直流自営線網の構築で、再エネ利用率向上や二酸化炭素(CO2)排出削減、レジリエンス(強靱性)強化を実現する。ラボはシステムの効果を検証。電力供給対象を近隣の建物に拡大したり、システムを他地域に適用したりすることを目指す。
電気新聞2023年11月6日
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