◆HP・蓄熱センター調査/技術成熟、導入しやすく

 ヒートポンプ機器の普及や統計化によるエネルギー自給率押し上げ効果は、2050年度に10.6ポイント――。ヒートポンプ・蓄熱センター(小宮山宏理事長)は19日、ヒートポンプ機器によるエネ自給率向上への効果を試算した調査結果を公表した。ヒートポンプが利用する大気熱を再生可能エネルギーとして国の統計に計上した上で、機器が最大限に普及した場合を想定し試算。この結果、50年度の自給率は21.9%となり、20年度の11.3%からの大幅な向上に寄与できるとした。

 調査には同センターが昨年に取りまとめたヒートポンプ機器の普及見通しに関する報告書や、経済産業省・資源エネルギー庁のデータなどを用いた。ヒートポンプ機器については、家庭・業務分野で給湯・空調に用いる機器、産業分野で空調に用いる機器を対象とした。

 試算に当たっては、報告書で示したケースの一つで、エコキュートが家庭の8割に普及するなど50年度に向けてヒートポンプ機器が最大限に普及した「高位シナリオ」を採用。機器の普及によるガス・灯油・重油使用量の減少分や電力の増加分、再エネの普及といった50年度までの電源構成の変動などを加味して算出した。

 ◇統計上存在せず

 ヒートポンプ機器は大気熱といった自然界に存在する熱を取り込み、冷暖房や給湯に利用する。この熱は09年制定のエネルギー供給構造高度化法で、再エネと定義されている。今回の調査では、こうしたヒートポンプ機器が利用した熱(再エネ量)が、エネルギー自給率を押し上げることを明らかにした。

 一方、ヒートポンプ機器が利用した熱は再エネと定義されているものの、現状は国の総合エネルギー統計には計上されていない。そのため、国内で稼働するエアコンやエコキュートなどが取り込んだ膨大な熱は、統計上存在しないことになっており、エネルギー利用の実態を正確に示せていない状況にある。

 こうした熱を計上することを調査では前提とした。統計への計上により、20年度のエネルギー自給率が4.6ポイント押し上げられ、15.9%まで高まるとする試算も提示。50年度の試算値21.9%と照らし合わせると、ヒートポンプ機器の最大限の普及が自給率を6.0ポイント上昇させるポテンシャルを持っていることも浮き彫りにした。

 ◇強靱化の効果も

 調査に携わった同センター業務部の田中覚課長は、結果を踏まえ「既に確立した技術であるヒートポンプが、エネルギー自給率向上に大きく寄与することが分かった」と強調。ヒートポンプ機器の普及・活用推進が、エネルギーセキュリティー強化や供給構造の強靱化に有効と指摘する。

電気新聞2023年10月20日