協定書を締結した3者(左から2人目が塚本執行役員・福井支店長)

 福井県、北陸電力、三井物産は27日、敦賀港で浮体式貯蔵再ガス化設備(FSRU)を用いた水素・アンモニアサプライチェーンに関する事業化調査について連携協定を締結した。洋上で液化アンモニアを受け入れ・貯蔵し、再ガス化して利用するFSRUの導入や、火力発電所でのアンモニア混焼への供給、荷役機械への水素電源導入などについて、3者が実現可能性を調査、検討する。

 FSRUは貯蔵タンク付き船舶に再ガス化装置を設置して使用する。同船舶を敦賀港に係留し、輸送船から冷却した液化アンモニアを受け入れて貯蔵。利用時は常温でガスに戻して供給する。

 今回の調査では、水素・アンモニアの需要量を想定した上で、どの程度のFSRUが必要で敦賀港に着岸可能か、どれくらいの能力の再ガス化装置が必要かなどを検証する。FSRUの設置場所や設備の能力、桟橋設備は三井物産が検証する。

 北陸電力は、敦賀港に隣接する石炭火力の敦賀火力発電所で混焼するとの仮定で調査。FSRUから発電所へ供給するパイプラインの仕様や規模、分解して水素を取り出すアンモニアクラッキング技術など、陸上供給部分の検討を行う。

 福井県は港湾の脱炭素化に向け、新たに整備する予定のガントリークレーンへの水素電源の導入効果やコスト、運用計画など調査する。

 27日の協定締結式には3者の代表者が出席した。北陸電力の塚本明執行役員・福井支店長は「FSRUは陸地で大規模な土地造成をするよりも早期構築が可能。福井県の脱炭素化に大きく貢献するものとしてしっかり検討したい」と語った。

 水素・アンモニアのサプライチェーン構築については、国の共創会議が昨年6月に嶺南地域を「ゼロカーボンを牽引する地域」として将来像に掲げた。福井県は官民協議会で敦賀港の港湾脱炭素化計画を検討中だ。

電気新聞2023年10月30日