日立製作所が、国内の電力流通事業と、海外流通事業を手掛ける日立エナジーを統合する作業に着手した。日立が51%、日立エナジーが49%出資していた日立HVDCテクノロジーズ(東京都千代田区)は10月、日立エナジーの完全子会社となった。今後は保守や環境負荷低減などのサービス事業を統合するほか、電力会社向け変圧器の生産を段階的に海外に移管する。国内外の知見や技術を融合し、受注などの成果に結びつけたい考えだ。

 日立は5月、国内電力流通事業と日立エナジーを統合し、新体制に移行すると発表した。高圧直流送電(HVDC)事業は2023年度下期、サービス事業は24年度に一体化すると掲げた。茨城県日立市の変圧器とガス絶縁開閉装置(GIS)の生産拠点は23年度下期から段階的に中国拠点に移し、24年度中に完了させる。

 日立エナジーは世界市場の広がりを追い風にHVDC変換所を各国で活発に受注している。直近では、同社製品を納入した英国の大型洋上風力発電プロジェクトが運開し、注目を集めた。

 「欧州送電系統運用者ネットワーク(ENTSO―E)」は30年までに国際連系線を6400万キロワット増強すると22年に公表した。日立HVDCテクノロジーズの調査によると、自励式HVDCは28年までに世界で累計約1億2千万キロワット稼働する計画で、21年比2.7倍に拡大する見通しだ。

 一方、日本は800万キロワットの海底直流送電や連系線増強でHVDCの導入を進める方針だが、50年を見据えた検討で立ち上がりは緩やかだ。日立エナジーは海外で培った知見を日本に還元する展開になりそうだ。(匂坂圭佑)

電気新聞2023年10月16日