テープカットで開設を祝った西村経産相(右から4人目)、山道CEO(同5人目)ら(11日、東京・日本橋兜町)

 東京証券取引所は11日、温室効果ガスの削減価値を取引する「カーボン・クレジット市場」を開設した。当面はJ―クレジットから取引を始め、二国間クレジット制度(JCM)のクレジットやGXリーグ超過削減枠などを取引対象に加えることも検討する。同日時点の登録者数は188者。取引初日の売買高は二酸化炭素(CO2)3689トン分だった。

 カーボン・クレジット市場は指し値注文のみで、平日の午前11時半と午後3時の1日2回約定する。11日の午後の部の約定値段は、再生可能エネルギー(電力)が1トン当たり3060円、再生可能エネルギー(熱)が同2480円、森林が同7千円となった。

 東証は同日、同市場に「マーケットメイカー制度」を試験的に導入することも公表。複数の証券会社や銀行をマーケットメイカーとして指定し、あらかじめ定められた時間帯に一定の価格帯で、一定の売り買い注文を同時に出すことを義務づける。市場の流動性を高めるのが目的で、マーケットメイカーには政府が保有クレジットを入札販売する。試験期間は来年3月まで。

 11日は開設を記念した式典も東証アローズ(東京都中央区)内で開催した。日本取引所グループの山道裕己取締役兼代表執行役グループ最高経営責任者(CEO)や経済産業省の西村康稔大臣らが出席。山道CEOは「当初はJ―クレジットのみが取引対象だが、市場参加者とともに取引対象の拡充も考えていきたい」と語った。

 西村経産相は「市場を通じてCO2の削減価値に価格が付けば、脱炭素投資への予見性が高まる。排出量取引に慣れ親しんでもらいたい」と積極的な活用を呼び掛けた。

電気新聞2023年10月12日