◇世界中のボランティアが支援/教育的使命へと活動広げる

 連載第1回では、WM(Waste Management=放射性廃棄物管理)国際会議発足のいきさつや、50年の活動を経て、放射性廃棄物管理だけでなく、廃止措置、コミュニケーション、人材開発、環境修復等に関する最大規模の国際会議となった状況を解説した。第2回では、国際間での情報共有を可能にした運営体制のポイントや、教育的役割を担うまでに活動の広がりを見せる会議の現状を紹介していこう。


 
◇すぐに翌年の準備

 50年前に放射性廃棄物研究者の情報共有の場としてスタートしたWM国際会議は、取り扱うテーマを拡大し、優先順位の高い技術開発・プロジェクトをタイムリーに取り上げるとともに、教育的使命の目的を達成するまでになった。

 これを可能にしたポイントは2つある。

 ▼NPO・WMS(Waste Management Symposia)の体制と運営

 ▼世界中のボランティアの参加

 WMSは、その年の会議が終わると、参加者へのウェブアンケート結果や世界中のボランティアの意見を集約・評価し、ニーズと技術開発動向を把握。それを反映させて次年度計画を策定し、技術セッションへの論文発表や展示会場へのブース出展等の募集を始める。すなわち、毎年PDCAを回している。WM国際会議の主要スケジュールを図に示す。

 WMS理事会は、予算、人事、将来構想、教育支援等に関する意思決定機関であり、米国に加え、英、独、カナダ、豪、日本の産業界、研究機関、学界、業界団体、政府機関からの19人と、米国エネルギー省(DOE)リエゾンの計20人(うち7人が女性)のボランティアで構成され、業務実行体制として常勤の執行部門が置かれている。

 この体制を支えているのが、世界中のボランティア190人によるプログラム諮問委員会(PAC)だ。11の技術分野について投票で選ばれた共同議長が、PACのメンバーと議論して世界中の技術開発動向やプロジェクトの最新状況を勘案し、次年度の会議で取り上げるトピックスを定め、応募される技術発表の査読と審査、技術セッションのプログラム作成に貢献している。この活動には日本も参加している。

 この体制は、50年間の実績と経験に基づき、作り上げられてきたものである。1979年のスリーマイル島原子力発電所事故をきっかけに、民間の原子力発電所関連の廃棄物対策への関心が拡大した。89年には、政府機関として冷戦時代の原子力開発遺産の浄化に取り組む米国DOE環境管理局(EM)が設立されたことに伴い、立地地域の関心が高まるとともに、会議参加者も急増した。

 こうした状況下にあって、委員会形式でスタートした会議を安定的に継続させるため、92年にNPOであるWMSが設立され、会議主催者となった。

 2000年代に入り、欧州での高レベル廃棄物処分場の進展、英国原子力廃止措置機関(NDA)設立、さらに福島第一原子力発電所事故により世界的な関心が高まり、北米以外からの参加者が増加した。

WM国際会議は取り扱うテーマを拡大し教育的な役割も担う場へと成長した(写真は技術セッションの様子)

 ◇福島第一の廃炉も

 日本関連では、福島第一事故後は12年にプレナリーセッションで福島の状況を報告して以来、毎年、福島第一の廃炉に関するパネルセッションを設けており、廃炉の計画と進捗、海外との連携等の最新状況について情報発信の場として活用されている。特に17年には、日本特集の企画を設定。経済産業省資源エネルギー庁審議官にも参加頂き、福島第一の廃炉に加えて日本のエネルギー政策、福島第一周辺地域の環境修復、福島復興、通常廃炉等についてのセッションを設け、非常に多数の聴衆の参加を得た。

 今後ますます複雑化する我が国の放射性廃棄物対策を、安全かつ円滑に進めるためには、人材確保・育成、技術開発・選定、サプライチェーン維持・発展、地域・国民・国際的な理解などの総合的な取り組みがますます重要となる。世界中の技術・経験を把握・活用する機会として、このWM国際会議を有効活用して頂ければと考えている。

 WM国際会議の最新情報は、wmsym.orgに掲載している。(この項おわり)

電気新聞2023年8月21日