記録的猛暑に見舞われた今夏は、電力需要が低い傾向が目立った。東京エリアの7、8月の平均気温は過去10年間で最も高かったが、最大電力は約5500万キロワットと、前年を約400万キロワット下回った。目立った理由は現時点で見当たらないが、電力関係者の間では「電気料金の上昇による節電・省エネの影響」と見る向きが強い。加えて、気温や湿度から割り出した「暑さ指数」や鉱工業生産指数の低下などの複合的な要因が背景にありそうだ。(東京支局長・小林健次)

 東京都心の7~8月の猛暑日は計22日間と、これまでの過去最多だった前年の16日間を上回った。8月は31日間全て真夏日という記録も作った。それにもかかわらず今夏の東京エリアの最大電力は7月18日午後2~3時の5525万キロワットと、前年の5930万キロワット(8月2日午後1~2時)を下回った。

 東京電力パワーグリッド(PG)は「前年の同気温帯より需要は一段低い傾向だった」と振り返る。要因は分析中だが、複数の可能性があると見ている。

 一つは気温や湿度などから割り出した「暑さ指数」の低下だ。各県庁所在地のデータを加重平均すると、高需要期の指数は前年を下回ったという。加えて、国からの節電要請などによる需要抑制効果や、鉱工業生産指数が前年に比べて低めに推移した影響もあったと推定する。

 ただ、いずれも劇的な影響を及ぼしたとは言えず、複数の要因が重なったとみられる。ある大手電力関係者は「電気料金の値上げが需要の押し下げ要因になったのは間違いないだろう。この傾向が今後も続くかどうか、注視する必要がある」と指摘する。

 ◇7月まで全国で

 日本気象協会によると、低需要傾向は東京エリアだけでなく、4月から7月まで全国的に続いた。同協会は、日平均気温と需要の関係がコロナ禍前(2016~19年)に比べてどう変化したのかを継続的にサンプル調査している。

 今夏の東京エリアの調査結果によれば、東京都心の気温が同程度だった日の需要電力量は7月に最大5%程度減少した。8月は同程度となるサンプルもあったが、気温の高い日を中心にわずかに低需要傾向がみられた。

 時間帯別の最大電力の出方は7月と8月で違いがあった。7月は全時間帯でコロナ禍前を下回ったのに対し、8月は日中がコロナ禍前と同程度で、夜間がわずかに低かった。同協会エネルギー事業課の渋谷早苗氏は「7月までの需要低下要因には不明な点があるが、8月は日中の猛暑の影響で冷房需要が伸び、低下幅を補ったと考えられる」と推定する。

 ◇冷房利用増加か

 8月に状況が一変したのは北海道、東北エリア。北海道エリアは過去に高気温時のサンプルが少なく比較が難しいが、東北エリアの日電力量はコロナ禍前の水準に回復した。時間帯別の最大電力は日中にコロナ禍前を上回り、夜間は下回った。気象協会は「今年は高温が一時的ではなく数日続いたため、冷房利用が増えた可能性がある」(渋谷氏)と分析している。

電気新聞2023年9月27日