小丸川発電所の地下設備。揚水時の入力電力が調整可能なことから太陽光の余剰吸収に加え周波数調整にも貢献している
小丸川発電所の地下設備。揚水時の入力電力が調整可能なことから太陽光の余剰吸収に加え周波数調整にも貢献している

 
FITで太陽光が大量導入。原子力も復帰
 
 太陽光発電の導入拡大が続く九州エリアで、再生可能エネルギー事業者に発電停止などを要請する「出力制御」が不可避となっている。九州電力は今秋にも出力制御を行う可能性が高いとして、事業者への事前周知など準備を進める方針だ。太陽光発電の増加に加え、きょう31日に定期検査で停止中だった川内原子力発電所2号機(PWR、89万キロワット)が並列する予定。約7年8カ月ぶりの原子力4基運転で、ベースロード電源の比率が高まる。太陽光の余剰電力を吸収しきれなくなった場合、大規模停電を防ぐため、離島を除いた全国初の出力制御実施に踏み切る見通しだ。
 
揚水の小丸川発電所、当初の想定と逆の運用に
 
 九州電力最大の揚水発電設備、小丸川発電所。地下400メートルに建設された高さ48メートル、幅24メートル、長さ188メートルの巨大な空間に、出力30万キロワットの発電機4台が設置されている。宮崎県のほぼ中心、木城町にある同発電所は、太陽光発電など再生可能エネの受け入れ最大化に欠かせない存在だ。同社宮崎水力事業所の重信孝所長は「建設当初の想定とまったく逆の運用になっている」と話す。

 揚水発電所は従来、夜間の電力で下部ダムから上部ダムへ水をくみ上げ、昼間の高需要時間帯に上部ダムの水を流して発電することで、ピーク時供給力の一翼を担っていた。それが現在は、昼間発生する太陽光の余剰電力を「揚水運転」することで消費、太陽光出力が低下する夕方以降に発電を行っている。

 FIT(再生可能エネルギー固定価格買取制度)施行前の2011年、九州電力の揚水発電所(天山、大平、小丸川の3カ所)の昼間帯(午前8時~午後5時)における揚水回数は年間わずか41回、夜間帯(午後5時~午前8時)は年間1024回だった。これが17年は昼間帯1264回に対し夜間帯586回と逆転。揚水運転の活用が、太陽光受け入れに貢献してきたことが数値からもうかがえる。

 2007年運開の小丸川発電所は、ポンプ水車の回転速度が変化する「可変速揚水発電システム」を採用しており、揚水運転時の入力電力を24万~34万キロワットの間で、調整することが可能。出力変動対応や周波数調整にも活用されており、文字通り、太陽光の「しわ取り」にも大きな役割を果たしてきた。
 
太陽光がGWからも10万kW超増加。火力、連系線も含め、系統制御はついに限界
 
 九州電力はこれまで揚水発電所に加え、火力発電所の出力抑制や関門連系線の活用により、太陽光発電の余剰電力を吸収して電力需給のバランスを保ってきたが、「それも限界に近づいている」(九州電力)という。

 今年7月末時点の太陽光連系量は803万キロワット。需給に対する太陽光発電の比率が一時80%を超えた今年4~5月の大型連休時より、10万キロワット以上増加している。当時、調整運転中の玄海原子力発電所3号機のみだった原子力の稼働も、川内2号機並列で全4基が運転状態となる。

 このまま暑さが和らぎ冷房需要が低下すると、太陽光発電の電力による供給力過多が現実化する。「需給バランスが大きく崩れた場合、周波数が乱れ、運転している発電機の自動停止が続き、最悪の場合、大規模停電に至る恐れもある」(同)という。
 
事業者2万件にDMで周知。発令時はメール、電話、システムなどで
 
 九州電力では出力制御の実施に備え、対象となる出力10キロワット以上の事業者約2万件に、ダイレクトメール(DM)による具体的方法の周知を進める。実際に、出力制御を行う場合、前日夕方までにメールなどで事業者に通知。当日朝に実施の最終判断を行う。出力制御指令は、旧ルール対象事業者に対しては電話やメールで発令。出力制御機能付きPCS(パワーコンディショナー)が設置された新ルール対象事業者には、同社の再生可能エネルギー運用システム(REMS)から制御指令値の配信が行われる。九州電力は「メディアなども活用し、(出力制御が)電力の安定供給に必要だということを丁寧に説明していく」としている。

電気新聞2018年8月31日