富士電機の株価が好調だ。8月1日に上場来高値を更新して以降も上昇を続け、9月6日には終値で節目の7千円を超えた。同社は2023年度第1四半期(4~6月)連結決算で売上高、各利益とも過去最高を記録。パワー半導体とパワエレを中心とした事業戦略が脱炭素社会のニーズと合致し、さらなる成長への期待が株価に反映されている。

 8月1日の株価終値6697円は、1989年以来34年ぶりに高値を更新した。7月に5千円台を付けることもあった株価は同月27日の決算発表日を境に上昇気流に乗り、9月6日には終値で7012円を付けた。

 野村証券は同社予想を上回った業績を好感し、目標株価を従来より300円高い8千円に引き上げた。同社アナリストの山崎雅也氏は「パワー半導体とパワエレが成長の牽引役となる事業ポートフォリオを持ち、シェアを上昇させている点が評価される」と分析する。

 富士電機は第1四半期の好決算を受け業績見通しを上方修正したが、山崎氏は「会社計画は依然保守的」とみる。パワー半導体の成長持続に加え、データセンター向け施設電源の拡大を展望する。飲料自販機などの食品流通事業の収益性が改善したことも業績を押し上げる。

 ゴールドマン・サックス証券のアナリストの原田亮氏は「カーボンニュートラルに向けて再生可能エネルギーが普及すれば、送電網の整備で富士電機は中心的役割を果たしていく」と期待を込める。開閉器や変圧器の需要増を期待する。

 パワー半導体では主要顧客であるトヨタ自動車の高水準な生産計画が追い風とみる。ファクトリーオートメーション(FA)市場で中国が減速するが、富士電機の事業規模は同業他社と比べ相対的に小さく、その点も安心材料といえそうだ。富士電機は通期営業利益を960億円と見通すが、原田氏は「1千億円まで上方修正があってもおかしくない」と読む。目標株価は7800円としている。

 富士電機の北澤通宏会長・最高経営責任者(CEO)は8月の電気新聞の取材で、「時価総額1兆円の維持・拡大を目指し、株価を7千円まで高めたい」と述べた。実現に向けてエネルギー・環境技術で脱炭素や半導体の成長市場を開拓する構えだ。(匂坂圭祐)

電気新聞2023年9月12日