◆再エネ広域取引、活性化

 北海道電力ネットワークは1日、北海道と本州を結ぶ新北本連系設備の容量を60万キロワットに倍増する工事(新々北本連系設備工事)に同日着手したと発表した。北海道側と青森県側の交流・直流変換設備や直流送電線を増設し、2028年3月に運用を始める。電源開発送変電ネットワークが所有する北本連系設備と合わせ、北海道と本州間の連系設備の総容量は120万キロワットに拡大する。再生可能エネルギー由来電力の広域取引の活性化や、北海道エリアの電力供給を安定化させる効果などを見込む。

 新たに建設・敷設する交直変換設備や送電線は「新々北本連系設備」と総称する。事業主体は北海道NWと東北電力ネットワークで、工事費は479億円。東北NWは先行して青森県側の27万5千V今別幹線の一部増強工事に入っている。

 北海道NWは1日、北海道側の北斗変換所(北斗市)と青森県側の今別変換所(今別町)にそれぞれ容量30万キロワットの交直変換設備を1台増設する工事などを始めた。来月には両変換所の間に亘長122キロメートルの25万V直流送電線「北斗今別直流幹線」を敷設する工事を始める。

 新北本連系設備の増強は、18年9月6日の北海道全域の大停電(ブラックアウト)を機に、国が検討を始めた。

 検討過程では、道内に豊富な再エネに由来する電力の広域取引が拡大することで、火力燃料費や二酸化炭素(CO2)排出削減対策費が全国的に下がる「広域メリットオーダー」効果が強調されるようになった。レジリエンスの観点からは、大型電源脱落などの非常時に道内に融通できる電力の量が増え「供給信頼度の向上が期待できる」(北海道NW)としている。

 新々北本連系設備の工事費負担については、国が新たに定めた「全国調整スキーム」を適用する。広域メリットオーダーによる便益分を算定して、全国負担とするのが特徴。再エネ由来電力の広域取引活性化による便益分と算定した250億円弱は、FIT(固定価格買取制度)賦課金から賄う。残額は沖縄を除く一般送配電事業者9社の負担金や電力広域的運営推進機関(広域機関)からの交付金などで賄うが、負担割合は今後定める。

電気新聞2023年9月4日