覚書の調印式に出席した西村経産相(左から1人目)と小口理事長(同2人目)

 今月3日から6日にかけて中東や英国を歴訪した西村康稔経済産業相は、各国と原子力・エネルギー分野での関係強化に精力的に取り組んだ。現地時間6日には英国を訪れ、関係閣僚との会談や共同声明の署名、覚書(MOU)の調印などに臨席。原子力関係では、日本原子力研究開発機構と英国原子力研究所(NNL)が高温ガス炉の研究開発や実証炉の許認可取得、建設に向けて協力するMOUを締結した。

 原子力機構とNNLとのMOUでは、日英両国での高温ガス炉の早期社会実装や原子力サプライチェーンの構築、人材育成で連携を強化していくことを確認。英国政府は、2030年代初頭にも高温ガス炉実証炉を稼働させる計画だ。

 ロンドンで同日行われた調印式には、原子力機構の小口正範理事長と、NNLのポール・ハワース最高経営責任者(CEO)が出席。西村経産相、クレア・クティーノ・英エネルギー安全保障・ネットゼロ相も調印に立ち会った。

 原子力機構は、高温工学試験研究炉「HTTR」(茨城県大洗町)を開発、運転するなど高温ガス炉に関する知見を蓄えてきた。原子力機構はNNLに高温ガス炉の設計情報を提供。知的財産は有償で譲渡する予定。

 英国政府は温室効果ガス排出実質ゼロの達成に向け、非電力分野の革新炉として高温ガス炉を選定。22年9月から高温ガス炉実証炉の開発プログラムに着手した。

 エネルギー安全保障・ネットゼロ省は今年7月、高温ガス炉実証炉の基本設計や採算性評価(フェーズB)を行う事業者として、原子力機構とNNLを採択した。フェーズBは25年に終了する予定。その後は許認可、建設(フェーズC)に移る。

電気新聞2023年9月8日