約6年ぶりに生産運転を再開したウラン濃縮工場(写真は原料ウランの入ったシリンダー)

 日本原燃は25日、青森県六ケ所村のウラン濃縮工場の生産運転を再開したと発表した。同工場の生産運転は2017年9月以来、約6年ぶり。これにより核燃料生産工程のうち、濃縮以降の工程を国内で行うことができるようになる。ロシア企業が国際市場で高いシェアを占める濃縮ウランでは、各国で脱ロシア依存に向けた動きが顕在化しており、国内工場での生産再開は、安定的な燃料調達に向け、大きな意義があると言えそうだ。

 原燃のウラン濃縮工場は、1992年3月に年間150トンSWU(分離作業単位)の生産能力で操業を開始した。年産1050トンSWUまで拡大後、遠心分離機のリプレースのため操業を一時停止。2013年5月までに新型遠心機の初期導入分、年産75トンSWUの生産運転を開始した。

 その後、新規制基準への適合に向けた安全対策や新型遠心機への更新、濃縮事業における品質保証活動の改善を図るため、17年9月から生産運転を停止していた。

 新規制基準への対応については、14年1月に安全審査を申請。17年5月に同審査に合格して事業変更許可を取得した。18年9月から5分割で設計・工事計画認可(設工認)を申請し、22年2月までに全ての設工認を取得した。併せて耐震補強や重大事故対策を進め、先月30日に使用前事業者検査を完了。今月24日に規制委から使用前確認証などを受領した。

 これを受け原燃は25日午後1時25分、原料の六フッ化ウラン(UF6)が入ったシリンダーを発生槽に装填するため、貯蔵室から移送を開始。発生槽で気体化されたUF6は今後遠心機に掛けられ、核分裂しやすいウラン235の濃度を軽水炉燃料に適した3~5%まで高める。

 原燃によると、23年度に濃縮工程後の製品ウランの出荷予定はない。運転再開後、事業者から求めがあれば輸送計画を変更して対応、出荷完了後に公表するとしている。

 今回、生産運転を再開したのは年産75トンSWUの遠心機。今後、24年3月に増設分(年産75トンSWU)が運転を開始。その後、27年度に年産450トンSWUに到達する予定だ。最終的には年産1500トンSWUまで拡張、100万キロワットの原子力プラントで12~13基分に相当する濃縮ウランを同工場で生産する計画となっている。

電気新聞2023年8月28日