◆27年運開目標に
東洋エンジニアリングは4日、水素の活用に向けて、国内外でアンモニア分解プラントの商業化に乗り出すと発表した。アンモニアを水素キャリアとし、水素を取り出して利用するサプライチェーンでの活用を見込む。水素燃焼ガスタービン(GT)で発電を行う電力会社や、燃料電池車(FCV)向けに水素を提供する企業などを顧客として想定する。アンモニア製造プラントの開発・設計で世界最大手の米国KBRからライセンスを取得。2027年の商用プラント運転開始を目指す。
アンモニアは、化石燃料に代わる脱炭素の燃料としての利用と、天然ガスや再生可能エネルギー由来の水素を安定化し、低コストで輸送する水素キャリアとしての利用が想定されている。新たに展開するのは水素キャリアとしてアンモニアを需要地へ運んだ後、水素を安定的に供給するための設備となる。
KBRは、アンモニア製造プラントのライセンス付与で世界市場の約50%を占める最大手。同分野の知見を生かし、分解(クラッキング)に最適化した「H2ACT」を設計した。東洋エンジは、製造プラントの実績や信頼性の高さなどを評価し、同技術の社会実装に取り組む。ライセンスの金額や期間は非開示。
現在、最大日量10トン程度のデモプラントの基本設計を進めており、24年に建設を決定できれば、26年にも試運転を開始できる見通し。同1200トンの商用プラントについても並行して取り組む体制を整えており、早ければ27年に運転開始が可能としている。
顧客として、水素GTを手掛ける電力会社を見込む。GTではアンモニア直接燃焼も検討されているが、大型化には技術的な不確実性もあることから、水素燃焼も選択肢として提案したい考え。
水素キャリアとしては、メチルシクロヘキサン(MCH)や液化水素(LH2)が競合するが、アンモニアの方がコストが低い試算もあるため競争力を確保できるとみる。
ライセンスは全世界を範囲としており、国内外で対応可能。水素キャリアを含めたロードマップがあることや、政府のサポート体制の充実などから日本国内での建設が有力とみている。
電気新聞2023年8月7日
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