JERAは、生成AI(人工知能)を火力発電所の業務効率化に生かす。親会社の東京電力、中部電力が長年蓄積してきた発電所の運用や、設備不具合に関する膨大な文書を活用。現場の社員が不具合の要因や対応方法を瞬時に判別できるようにして、業務の標準化や品質向上などにつなげる。最新鋭の姉崎火力発電所で2023年度中に社内実証を終えたい考え。その後、JERAの他発電所にも生成AIの活用を広げる方針だ。

 東京電力、中部電力が蓄積してきたプラント不具合などに関する文書は構造化されておらず、必要な情報にたどり着くまでに時間を要することが多い。従来、現場社員が未経験の事象に遭遇した際は、まず詳しいベテラン社員に他発電所での類似事例などを聞き取った上で、社内の文書管理システムに当たっていた。それでも見つからない場合は書庫で紙資料と格闘する必要があった。

 実証では、一般に公開されている大規模言語モデルに、JERAが持つ知見を関連付け、社内で活用できるようにする。発電設備の運用に精通し、知識が豊富なベテラン社員の代替として生成AIを活用する。現場に実装されれば、不具合対応などに関して飛躍的な効率向上が見込める。また、熟練社員が培ってきた知見を、体系立てて後世に残すという観点からも意義が大きい。

 生成AIの活用は、先進的な発電所の運営を実現する「デジタル発電所」(DPP)の取り組みの一環となる。JERAがDPPのショーケースとして位置付ける姉崎火力で、最初に実証を進める。

電気新聞2023年7月28日