電気自動車(EV)の利便性向上へ、関係する事業者や業界団体から充電器出力の引き上げを求める声が出ている。車載蓄電池の容量増加が進むと、現在主流の普通充電器の出力6キロワット(200V、30A)では充電時間が長引くことが懸念されるためだ。ただ、電流が50Aを超えると電気用品安全法の対象外となる。電気事業法でも電流に関する具体的な記載はない。充電器出力を引き上げるならば、安全性を担保する制度、枠組みを整備することが欠かせない。

 13日に開かれた経済産業省の有識者会合「充電インフラ整備促進に関する検討会」。参加した全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会は、EVの利便性を高めるため、旅先での充電器設置とともに普通充電の高電圧化を求めた。19日の会合でも不動産協会が、出力10キロワットの充電器を要望。高額不動産物件の購入者を想定し、「(出力の異なる充電器整備は)ニーズに応えるためにも必要」と主張した。

 対策に動いているのは自動車関連の研究機関である日本自動車研究所(JARI)だ。会合で、普通充電器の安全性を評価するJARI認証の出力基準値を引き上げる検討を始めたと説明した。現状で基準は200V、30A(6キロワット)だが、200V、50A(10キロワット)まで高める方針だ。50A超も視野に入れているが、電気用品安全法の対象外となるため、経産省に「法令などの枠組みの提示」を求めた。

 出力50キロワットを超える急速充電器についても制度的課題がある。充電時間が短くなればEV所有者にとっては利便性が向上し、充電器利用の増加にもつながると考えられる。ただ、充電器が電力系統から高圧で引き込む自家用電気工作物に該当する場合、技術基準を明確化することが求められる。

 また、車両側を含めて、充電の高速化や高電圧化に対応するためのコストと見合う社会的な便益を得られるのか、バランスを考えることも必要だ。

 8月を予定する次回の検討会では、事業者からヒアリングした内容をまとめて政策、ロードマップ案を提示する予定だ。EVと充電器をつなぐ通信プロトコルの在り方も論点となる。出てきた課題は他の審議会でも議論し、政策に反映する。

電気新聞2023年7月26日