西日本豪雨の被災地では電力設備や道路などインフラの復旧とともに、被災者のケアも重要になっている。このため、経済産業省は避難所での熱中症対策の一環として、電力会社や電気工事会社に、スポットエアコンや業務用エアコンの設置工事、それに伴う分電盤の容量拡張工事などへの協力を要請。これを受け、中電工、四電工に加え、九電工、きんでんを含む電工4社が迅速に工事を展開し、避難所の環境改善に貢献している。

 

◆中電工、健康確保へ即日施工。3部門連携し迅速に

 
 西日本を襲った豪雨の影響で、町全体の約4分の1が冠水した岡山県倉敷市真備町地区。ここでは多くの住民が避難生活を強いられている。厳しい暑さが続く中、避難先となった学校の体育館などでは空調設備が備わっていないため、熱中症の危険性が高まっている。

 住民の健康を守るため、中国電力の要請を受けた中電工は、同地区をはじめ倉敷市内の各避難所で業務用エアコンの設置工事を急ピッチで進めた。これら空調設備が稼働したことで、避難所の環境改善に一役買っている。

 今月10日、真備町地区の3カ所(倉敷市立岡田小学校、二万小学校、薗小学校)、水島地区の2カ所(第二福田小学校、第五福田小学校)の計5カ所の体育館で業務用エアコンの設置工事を行った。11日は水島地区の連島南小学校、連島南中学校でも工事を実施。各避難所には数百人が生活をしており、業務用エアコン設置台数は1カ所当たり8~18台の規模という。

業務用エアコンの設置工事が行われた倉敷市立第五福田小学校の体育館
業務用エアコンの設置工事が行われた倉敷市立第五福田小学校の体育館

 主な作業はエアコンの稼働に必要な電源の容量確保、空調機器の配管工事と据え付け工事だ。中電工の配電部、電気技術部、空調管工事部の3部門が連携して取り組んでいる。倉敷支社の社員を中心に、広島市の本店から電気技術部の社員2人が現地入りして指揮を執り、各避難所で同時並行的に作業を進めた。

 メーカーではないものの、分電盤の調達が間に合わない場合は、現地に部品を集め、組み立てて施工するケースもあるという。技術センター製器工場の工場長とスタッフが対応に当たった。

 中電工は「今回の工事は即日施工が求められ、突貫工事で対応している」とし、避難所の環境整備に向けて技術力を駆使し素早く作業を進めている。

 

◆四電工、回路の増設を並行。帰宅復旧作業にも奔走

 
 愛媛県西予市で避難所となった市立野村小学校、市立野村中学校、市立明間小学校の体育館では、四国電力、四電工、四国電気保安協会が協力業者と共にクーラー設置に当たった。

避難所となった野村中学校体育館でのスポットクーラー設置作業(11日、四国電力提供)
避難所となった野村中学校体育館でのスポットクーラー設置作業(11日、四国電力提供)

 四電工愛媛支店八幡浜営業所の升井進所長によると、これら3つの避難所では11日に計15台のスポットクーラーを設置。同営業所設備課の5人が総出で作業に当たった。野村小は建物が比較的新しく、専用回路が十分あったことからコードリールのみで対応できたが、野村中では協力業者と共に回路を増設しなくてはならなかった。明間小にはコンセントを持っていき、仮回路を設けて対応した。

 升井所長は「作業には11日夕方から午後11時までかかった。避難所は午後10時で消灯なので、作業音などでご迷惑をかけたのではないか」と話し、避難者を気遣っていた。避難の長期化が懸念されたため、その後、さらに置き型クーラー15台が届き、13日は朝からこれらの設置工事に追われた。

 14日からの3連休は、一般工事部門がクーラーの追加設置を行ったほか、避難所から自宅に戻った住民のために、四国電力と四電工の外線班が絶縁測定やメーターの取り換えといった作業に奔走した。16日のピーク時には、四国電力と四電工を合わせて131人が、これら復旧対応に当たったという。

 統括責任者を務めた四国電力送配電カンパニー宇和島支社八幡浜事業所の水本真所長は、電話取材で「地元の方々はこんなに早く電気が届くとは思っておらず、お礼の言葉を幾たびも頂いた」と話した。16日には西予市災害対策本部で管家一夫市長からも感謝の言葉を直接掛けられたという。

 今回の復旧対応に当たって、水本所長は「四国電力グループ一体で支援を頂き、現地の人間としてとてもありがたい。グループ社員の頑張りを身近に感じ、本当に頭の下がる思いだ」と感想を話し、電話口で言葉を詰まらせていた。

 

◆九電工はクーラー40台を調達。きんでんは取り付け工事を

 
 九電工は経産省からの支援要請を受け、10日にスポットクーラー40台を数時間で調達し、福岡空港へと持ち込んだ。このスポットクーラーは自衛隊ヘリで被災地の広島、愛媛(各20台)に直接空輸された。また、11日には岡山県倉敷市内の避難所である市立小学校で、業務用エアコンの設置も支援。北九州支店電気技術部から連絡を受けた倉敷市の工事所から4人がクーラー設置工事に携わった。

 きんでんも13日に倉敷市の避難所(小学校)でスポットクーラーの取り付け工事を実施。倉敷営業所と日頃から取引のある協力会社の作業員がスポットクーラー専用の電源工事などを行った。きんでんは「施行実施日までの検討期間がなく、人員と材料の確保に苦労した」とするが、被災者からは「涼しくなり夜もぐっすり眠れそうです」などの声が聞かれたという。

電気新聞2018年7月19日