九州電力は、文章などを自動作成する生成AI(人工知能)の一種「Chat(チャット)GPT」を業務に導入する。文書の素案作成などを効率化して、業務の生産性を高める狙い。既に社内関係者で試行運用を始めており、7月中にも九州電力と九州電力送配電に利用を広げる。導入に当たってはセキュリティー対策を徹底する。エネルギー大手がチャットGPTの利活用を本格的に進める事例はまだ珍しく、注目を集めそうだ。

 九州電力は6月時点で、デジタルトランスフォーメーション(DX)の専門部署「DX推進本部」や情報通信本部などでチャットGPTの試行運用を進めている。準備が整い次第、九州電力と九州送配電で全社展開する予定。早期にチャットGPTを導入することにより、組織大で生成AIを活用するスキルを高めたい考えだ。

 資料作成だけでなく企画の構想、データ分析といった広範な分野で、チャットGPTが業務効率化や品質向上に役立つとみている。具体的には、顧客へのインタビュー質問案の作成や、チャットGPTを議論の相手に見立てたブレインストーミング、プログラムコードの生成やエラーの確認などでの活用を検討する。

 懸念される機密情報の漏えいなどが起きないよう、セキュリティーには細心の注意を払う。利用するのは、チャットGPTを開発した米オープンAI社側が入力情報を学習しないクラウドサービスとする。九州電力と九州送配電が個社でそれぞれ契約する。

 生成AIの技術は日進月歩の勢いで進化している。九州電力は生成AIを巡る動向を注視し続け、最適な活用方法を継続的に検討する方針だ。生成AIの活用では必要に応じて、知見が豊富な外部企業の導入支援を受けることも検討する。

 九州電力は収益拡大や生産性向上、新規事業の創出などを目指しDXを推進中。九州送配電を含めた全社員に、DX推進に必要な技術や知識を身に付けるための研修を25年度までに実施する計画を示すなど、抜本的な企業変革を急いでいる。

電気新聞2023年7月4日