東京電力パワーグリッド(PG)と中部電力、コンサルティング会社のICMG(東京都千代田区、船橋仁社長)は29日、シンガポールに海外送配電事業や次世代インフラ事業の投資・運営を手掛ける新会社を設立することで合意したと発表した。新会社は、東電PGや中部電力が日本で培った技術力やノウハウを活用。アジアを中心とした海外送配電事業などに参画することで、収益拡大を図る。

 新会社は7月にも設立される見通しで、代表者は東電PGから起用する方向で調整している。3社の出資総額は4億5千万円。東電PGが約2億7千万円、中部電力が約1億7千万円、残りをICMGが出資する。

 新会社は、アジア地域を軸に送配電事業の開発や関連ビジネスへの投資・運営を手掛ける。アジアの未電化地域でのマイクログリッド構築や、次世代インフラ事業という観点で電動バイクを使ったビジネスも視野に入れている。

 また、エネルギー関連などの事業化支援や人材育成も展開する。人材育成については、ICMGの研修プログラムを活用。現地でのプロジェクトなど実践の場を通じて、新規案件を事業化・運営できるリーダーを育てる。

 東電PGは、海外事業の拡大を成長戦略の柱の一つに据えている。同社は国内で培った送配電網の建設・保守・運用に関するノウハウを活用し、特に成長著しいアジア市場で事業拡大を図ろうとしている。新会社の設立は具体策の一環。

 一方、中部電力も海外でのエネルギー事業の強化に取り組んでおり、2017年にはドイツの送電事業に出資・参画した。現地では北海の洋上風力発電所から同国の陸上変電所につなぐ4つの高圧直流送電事業を手掛けている。

 中部電力は、海外での配電網の改善に関するコンサルティング事業など、一部プロジェクトを東電フュエル&パワー(F&P)との合弁会社JERAに移管している。今回のシンガポールでの事業は東電PGと中部電力が担う。

電気新聞2018年7月2日