キューヘンのSTATCOMが導入実績を伸ばしている

 太陽光発電設備の導入拡大に起因して、配電線で予期せぬ電圧変動が起きる「電圧フリッカ」問題が、全国に波及しつつある。太陽光向けパワーコンディショナー(PCS)の設定変更により一定程度影響を抑えられるが、太陽光の拡大ペースに対策が追いつかない状況だ。発生初期からこの問題と向き合ってきた九州電力グループのキューヘン(福岡県福津市、八木繁社長)は、電圧フリッカの発生源を特定し、最適な設備対策につなげる実証に乗り出した。

 九州エリアは日照条件が良く、2012年のFIT(固定価格買取制度)導入後、全国に先駆けて太陽光の導入が進んだ。それに伴い九州電力グループは需給バランスの維持に欠かせない出力抑制や、電圧フリッカなど、太陽光がもたらす様々な問題にいち早く対応してきた。

 ◇複数の配電線で

 電圧フリッカは配電線とつながった太陽光のPCSが、単独運転防止のために無効電力を出すことが原因となって起きる。電圧変動により、住宅や商業施設の照明がちらつくなどの影響が出た場合、早期に手を打つ必要がある。

 近年は太陽光の拡大に伴い、九州以外のエリアでも電圧フリッカが発生している。特定の発電事業者に起因して発生する局所的な電圧フリッカだけではなく、複数の配電線で同時多発的に起きる広域的な電圧フリッカも問題になっている。

 キューヘンは、系統監視システムなどを手掛ける近計システム(大阪市、村川保隆社長)と連携し、配電用変電所から電圧フリッカの発生源となる配電線を特定し、有効な設備対策につなげる実証を行っている。

 具体的には、変電所にPQVF(有効電力、無効電力、電圧、周波数)観測システムを設置し、複数の配電線の運用状況を詳細に解析する。同システムは、配電線の電流・電圧を長時間記録する装置と、電圧フリッカ検出機能を備えたバンク逆潮流事故記録装置で構成される。

 同システムを使い、変電所の母線、および各配電線で電圧フリッカが発生しているかどうかをまず検出する。発生していた場合、発生日時のデータを観測し、どこで起きたのかを特定する。

 電圧フリッカの抑制には自励式静止形無効電力補償装置(STATCOM)を用いる。同装置は無効電力を調整し、電圧を安定化させる機能を持つ。急激な電圧変動に0.03秒で応答できる。電圧フリッカ対策として、従来使われてきた無効電力補償装置(SVC)の応答時間(0.1秒)と比べても、極めて短時間で応答できる点が強みだ。

 ◇九州外でも実績

 変電所から配電線の運用状況を詳細に解析することで、STATCOMの最適な配置を提案できる。すでにSTATCOMを設置済みの場合、その調整機能が有効に働いたかも検証できる。

 九州域内ではこうした解析を、九州電力送配電と共同で進めている。解析手法を確立したうえで、国内の他エリアでもノウハウを展開し、STATCOMの導入拡大につなげる。

 キューヘン製のSTATCOMはすでに九州送配電エリアで4台を導入済み。全国的に需要が高まっており、東京電力パワーグリッド(PG)、中国電力ネットワーク向けでも導入実績を伸ばしている。解析と組み合わせて最適な配置を提案することで、今後は年10~20台程度の受注を目指す。

電気新聞2023年6月26日