TLCとサイトテックが開発する資機材運搬用ドローンのイメージ
TLCとサイトテックが開発する資機材運搬用ドローンのイメージ

 TLC(東京都北区、大西斉社長)は、架空送電線工事に関わる資機材運搬用のドローンとして、重量物の運搬や長時間飛行に耐えられるエンジン搭載のハイブリッド型ドローンを開発する。国産ドローン開発を手掛けるサイトテック(山梨県身延町、齊藤邦男社長)と共同で、約1時間の飛行、荷重40キログラムの運搬ができるドローン開発を目指す。今秋に完成し、来年度に運用開始する予定。

 TLCは、鉄塔基礎の地盤調査に使用するボーリングマシンの運搬用としてドローンの活用を想定。およそ30キログラムの機材を運搬でき、1時間程度の安定飛行が可能なドローンを開発することで、地盤調査費用の低減を目指す。飛行時間は、1フライト5~6分を10回行える想定で算出した。

 急峻な山間部におけるボーリングマシンの運搬に人力の負担軽減のためモノレールを敷設することが多く、地盤調査費用を膨らませる原因となる。電力会社による地盤測定機の軽量化とあわせ、ドローン利用によるコスト削減を狙う。

 計画中の新機種はサイトテックの運搬用大型機種「YOROI」をベースに開発。カーボンシェル型でアーム4本、プロペラ8本を採用。ラジコンヘリ向けから改良したガソリンエンジンを機体の揚力用に4機取り付ける。モーター4個とバッテリー8本は機体の飛行姿勢の制御用に絞って使用する。エネルギー消費の大きい発射時の出力をエンジンに任せることで、バッテリーの消費を抑える。

 総重量は200キログラム。揚力は130キログラムで、運搬可能な荷重(ペイロード)は最大40キログラムを想定。風などの荷重を見越し、約30キログラムの運搬性能を目指す。木々の多い場所での受け渡しを想定し、荷物は機体で直接抱えず、吊り下げる形を採用する。

 従来のドローンはバッテリー容量の限界から飛行時間に制限がある。電源ケーブルを接続する給電式のドローンもあるが、山間部での運用は難しい。ある程度の荷重に耐え、長時間の飛行を実現するためハイブリッド型ドローンの開発を検討した。

 安全性や安定性も万全を期す。ドローン用パラシュートの取り付けや、送信機を2機用いて電波の受信ロスを防ぐ2オペレーションシステムなど、新知見の適否も検討する。

 TLCはこのほど、サイトテックの技術研究所で東京電力ホールディングス(HD)、東京電力パワーグリッド(PG)、関電工、東電設計など関係者を招いた開発説明会を実施。エンジンや電波受信の安定性、騒音、活線近くで生じる誘導磁場の影響などについて質疑応答を行った。TLCの鳥越耕一取締役は「皆さんの協力を頂きたい。忌憚(きたん)のない意見からより良いものにしたい」と述べ、開発への協力を求めた。

電気新聞2018年5月29日