電気通信大などが開発を進める円筒型太陽電池

 東京都と電気通信大学は、円筒型の太陽電池を建物壁面に設置する「都市型太陽光発電」の実証を今年度から開始した。以前から電気通信大は、円筒型のガラス管に太陽電池を封止することで低コストと高耐久性を確保する発電デバイスの開発に取り組んでいた。このデバイスは反射光を含む様々な角度からの受光が可能。実際に壁面に設置して発電特性の検証や、汚れの付着など運用面の課題洗い出しなどに取り組む。

 実証事業は、電気通信大などが都の「大学研究者による事業提案制度」に提案し、都民投票と有識者らによる審査で採択。両者は4月に実証へ向けた基本協定を締結した。

 電気通信大が開発を進める円筒型太陽電池は、フレキシブル太陽電池セルを蛍光灯のような円筒型のガラス管に挿入する構造だ。破壊に対する強度を確保し、破損しても飛散しない構造を取り入れている。

 一般的なフレキシブル太陽電池がフィルムで大面積を封止するのに対し、管の両端で完全封止するため耐久性とコストに優れる。一般的なシリコン太陽電池と比べると、重量は3分の1以下で運搬・設置がしやすい。直進光に加えて反射光もエネルギー変換できるため、およそ1.5倍の発電電力量が得られるという。

 管と管の間から風が抜けるため、風圧に強いという長所もある。従来型太陽光は最大の電力量が得られる方角、角度で路地や屋根に設置されるためピークが立ちやすい。壁面設置なら、日の出から日没までの発電量変化を比較的なだらかにすることが期待される。

 都との実証は4月から2026年3月まで行う。23年度は蓄電を含む円筒型太陽電池システムの設計、ユニット試作などを行う。24年度以降に電気通信大の建物を活用したシステム実証の実施、創電・給電の新たなアイデアのデモンストレーションを行う予定。

 実証ではアモルファスシリコン太陽電池を利用する。円筒型の技術は、次世代太陽電池として期待されるペロブスカイト型も大面積化が進めば応用可能だという。

 また、封止技術は特殊照明大手のウシオ電機が提供しており、今後も「事業化を支援していく」考えだ。

電気新聞2023年4月25日