GEベルノバは洋上風車の大型化競争に伴うサプライチェーンの疲弊に目を配る(GE提供)

 米GEベルノバは、洋上風車で1万5500キロワット級機種を主力に位置付ける。同社は最大1万8千キロワット機の開発を進めるが、急速な大型化によるサプライチェーン各社の疲弊を防ぐ狙い。当面は中型機の開発網を成熟させることで、事業の収益性を改善する戦略だ。(匂坂圭佑)

 米国証券取引委員会に、このほど提出した株主宛て文書で「将来、洋上風力発電事業の主力製品は『ハリアデX15.5メガワット―250』になる」と方針を示した。ハリアデXはGEベルノバの洋上風車ブランド名。現在は1万2千~1万4千キロワット級を提供する。

 ◇投資が重荷に

 GEベルノバは2023年3月、1万7千~1万8千キロワットの新機種を開発すると表明した。現行機種から3割ほど出力を高める計画だ。日本の洋上風力公募第2ラウンドの応札事業者にも提案した。

 1万8千キロワットは風車単機出力で世界最大級となる。これをあえて主力機に据えなかったのは、大型機の開発競争に伴う投資が重荷になったためだ。

 GEベルノバの1万3千キロワット洋上風車であるハリアデXが初めて商用運転したのは23年だった。最新機種の稼働を待たず行われた次期大型機種の開発表明は、風車メーカー間の激しい競争を印象付けた。

 風車の大型化は発電単価を下げる半面、開発を手掛けるGEベルノバ、および部品サプライヤーに相応の投資を求める。大型化に耐えられる設計を研究し、技術開発にめどが付いた後は生産ラインを構築する必要もある。

 発電事業者にとっても、サプライチェーン管理が重荷となる。輸送に使う港や船を確保するために調査が必要となるからだ。サプライチェーンの見直しがコストアップや計画遅延につながる場合がある。GEベルノバは大型化のペースを緩め、現行機種の延長線上に当たる機種を主力と位置付けることで、こうしたリスクを抑える考えだ。

 素材価格や人件費の高騰が直撃し、洋上風力業界を取り巻く事業環境は世界的に厳しさを増す。23年10月に開かれた経済産業省の調達価格等算定委員会に三菱商事が提出した資料によると、欧米大手メーカー3社は22年に純損失を計上。23年にはオーステッドが米国で開発計画を中止した。

 GEベルノバは株主向け文書で「洋上風力発電業界は最近、高いプロジェクト実行リスクと、現在の価格水準による収益性の限界に直面している」と事業環境に危機感を示した。その上で同社は「業界の成熟に伴い、既存技術とサプライチェーンは改善される」と展望する。その一助として、同社にとって中型機となる1万5500キロワット機種を磨き上げることで収益性の改善につなげる。

 ◇成熟で改善へ

 GEベルノバの戦略転換について、同業他社の風車メーカー関係者もサプライチェーンの疲弊という課題に理解を示す。一方、「中国勢は大型化の手を緩めておらず、開発競争は止まらない」との見立ても浮上する。GEベルノバも1万8千キロワット機の開発を継続する構えだ。

電気新聞2024年4月3日