◆ZEH普及も追い風/当面は勢い持続予想
エコキュートの国内年間出荷台数が2022年度、初めて70万台を突破した。前年度比15.9%増を記録し、過去最高を大きく更新した。エコキュート市場は、オール電化住宅の普及初期から本格普及期に当たる00年代に導入した家庭を中心に、買い替え需要が顕在化。加えて、脱炭素の潮流に伴うZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)の普及も追い風となっている。出荷数は当面、勢いを落とさずに伸び続けていく見通しだ。(矢部八千穂)
エコキュートはヒートポンプ技術による高い省エネ性などが認められ、オール電化の拡大とともに国内で普及が進んできた。出荷台数は本格的な普及が始まった00年代中頃から順調に伸び続け、10年度に当時最高となる56万6千台を記録した。しかし、東日本大震災を機に風向きが一変。出荷ペースは鈍化し、15年度には40万台の水準まで落ち込んだ。
それでも、オール電化営業の再開などにより、16年度からは前年度比プラスを回復。20年度にはコロナ禍に伴う工事停滞でマイナス影響もあったが、一貫して増加基調を保ってきた。
近年は増加ペースが加速し、市場は活況を呈している。日本冷凍空調工業会が20日に公表した統計によると、22年度の出荷台数は70万4千台。21年度も前年度比12.5%増、初の60万台超と好調だったが、台数も伸び率も大幅に上回った。
活況の主な要因は買い替え需要だ。国内には設置から15年以上が経過して耐用年数を大幅に超えたストックが数多く存在し、その買い替えが市場拡大をもたらしている。今後も更新期のストックは増え続けると見込まれる。営業現場からは「買い替え需要の引き合いは強い」(三菱電機)との声が上がる。
ZEHの普及加速に向けた動きも、需要拡大を後押しする。高効率設備が求められるZEH住宅とエコキュートは親和性が高い。21年度のZEH住宅では約7割がエコキュートを採用した。
戸建て新築注文住宅のZEH化率は年々上昇。政府は30年度以降に新設される住宅について、ZEH水準の省エネ性を求める方針を掲げている。こうしたZEH標準化に向けた動きも、エコキュート市場拡大の強力な追い風となりそうだ。
政府の給湯省エネ事業による補助金の申請が3月末に始まっており、一定の省エネ性能を満たしたエコキュートには5万円が補助される。この補助金も23年度の需要を底上げすると見込まれる。
主要メーカーは拡大する需要の取り込みに本腰を入れる。三菱電機は、昨年からフル生産が続いているとするものの、主要機種については「十分な生産量を確保している」と話す。パナソニックも市場が25年度に80万台、30年度に90万台へ拡大するとの独自推計を示し、23年度に過去最高となる年間20万台の販売目標を掲げた。
買い替え需要の継続とZEH住宅の普及加速により、エコキュート市場の盛り上がりは当面続く見通しだ。累計出荷台数は、23年度上期中には900万台を突破するとみられる。
エコキュートを販売する事業者は旺盛な需要を取り込みながら、さらなる需要の掘り起こしを狙う。耐用年数を超えてから日が浅いストックの買い替えも開拓の余地があるとみられる。既存住宅への省エネリフォームを含めた買い替え提案など、工夫が問われそうだ。
電気新聞2023年4月21日