試験用に建てた烏帽子型鉄塔をヘリで解体する様子

 関西電力送配電は、主に山間部などにある烏帽子(えぼし)型鋼管鉄塔の解体・撤去でヘリコプターを活用した新工法を開発した。専用の治具とヘリに取り付けた吊り上げ装置で鉄塔上部から順に複数回に分けて撤去する。従来のタワークレーンによる解体と比べて工期は3分の1に短縮され、工費も4割程度抑制できるという。新工法は特許申請済みで、同社若狭幹線に敷設された烏帽子型鋼管鉄塔76基の撤去工事で新工法を採用する。

 鉄塔の解体・撤去は一般的にタワークレーンを用いる。山間部などではクレーンのほか作業構台など多くの仮設設備の構築・撤去といった解体前後の工程に時間とコストがかかる。

 同社が開発した新工法はそれらの工程が省ける。新工法は「てこピン」や「ポストピン」といった専用治具を鉄塔の接合部に事前に取り付ける。ヘリの装置で鉄塔の一部を吊り上げたタイミングで塔上の作業員が治具を取り外し、部分的に解体・撤去していく。

 ヘリで運搬できる部材の最大重量は1回の作業当たり2トン以下。烏帽子型鉄塔は1基約30トンで、ヘリでの運搬作業は15回程度に分けて行う。工期は準備作業も含めて1基当たり10日を想定する。

 クレーンによる解体工事は1基当たり約30日要するため、工期と工費の両面でヘリによる解体にメリットがある。

 同社は福井県から滋賀県を結ぶ50万Vの若狭幹線に敷設された烏帽子型鋼管鉄塔76基の解体・撤去で新工法を用いる。烏帽子型は主に山間部など降雪地に敷設されており、送電線を水平や三角に配列したもので、高さは30~50メートルのものが多い。

 同社によると、鋼管より軽量な山形鋼を部材とする鉄塔の解体にヘリを使う事例は他の一般送配電事業者も手掛けているという。烏帽子型鋼管鉄塔の解体でヘリを活用するのは国内初とみられる。

電気新聞2023年4月21日