第5次エネルギー基本計画の素案について議論した基本政策部会(16日、東京・霞が関)
第5次エネルギー基本計画の素案について議論した基本政策部会(16日、東京・霞が関)

 約9カ月にわたる議論を経て、第5次エネルギー基本計画の素案がまとまった。エネルギーミックス(2030年度の電源構成)で示した目標比率は変えない中で、再生可能エネルギーの「主力電源化」を初めて打ち出した。ただ、再生可能エネルギーの導入拡大に向けては、依然として高いコスト構造や系統制約など克服すべき課題が山積している。原子力を含め、目標達成への整合性には疑問が残った。

 昨年8月、総合資源エネルギー調査会(経済産業相の諮問機関)基本政策分科会(分科会長=坂根正弘・コマツ相談役)で改定作業がスタートした直後から、経産省は「骨格を変える必要はないと思っている」(世耕弘成経産相)と、大幅な見直しには踏み込まない考えを示していた。

 エネルギーミックス策定から2年程度しか経過していないため、まずは電源ごとの目標比率の達成に万全を期すとの理由からだ。また、政治的にも原子力、再生可能エネルギーの扱いは難しい。そうした中でいわば折衷案として示されたのが、再生可能エネの「主力電源化」だ。経産省は「既にエネルギーミックスでは22~24%を表明している。4分の1を占められれば、主力電源といっても無理筋ではない」(幹部)とする。
 
 ◇数字での担保
 
 素案には、経産省・資源エネルギー庁の中でも省エネルギー・新エネルギー部と電力・ガス事業部が垣根を越えて政策課題を整理した有識者会合の検討成果が色濃く反映された。エネルギーミックスで定める目標比率「22~24%」は維持しつつも、FIT(再生可能エネルギー固定価格買取制度)の適正化や入札制度の拡大でコストを抑制。系統制約の克服、調整力確保など多岐にわたる施策の必要性を打ち出した。

 一方、分科会の委員からは経済活動への影響を懸念し、産業界を中心に「エネルギーミックスの数字は動かすべきではない」との声が上がったのに対し、橘川武郎・東京理科大学教授は「そもそも現行のエネルギーミックスの数字がおかしい。主力電源を目指すなら、目標比率を30%程度にまで引き上げるべきではないか」と主張。表現だけでなく、「数字での担保」を求めた。

 原子力は現行計画が大筋で引き継がれ、依存度は低減させるものの、「長期的なエネルギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源」として堅持すると明記。新増設・リプレースの記述は見送られたが、「安全性・経済性・機動性に優れた炉の追求」との文言が加わった。小型モジュール炉(SMR)などを念頭に、将来的な技術開発に含みを持たせた形だ。
 
 ◇厳しさ反映を
 
 ただ、現状では再稼働に至ったプラントは8基にとどまり、新増設・リプレースの先行きも見えない中、果たしてベースロード電源たり得るか。立地自治体からは「地元では単なる考え方や数字では済まされない状況。認識の厳しさを反映し、核心に触れてほしい」(西川一誠福井県知事)といった切実な声が上がった。

 50年の長期的な視点からエネルギー・産業の在り方を探った「エネルギー情勢懇談会」でも、原子力の扱いを巡っては最後まで折り合いがつかなかった。懇談会の委員も兼ねた坂根氏は「技術自給率」の低下を懸念。「新しい技術を開発するにも今から準備しないと間に合わない」と危機感を募らせた。

 それぞれの思惑を残したまま、今夏にも正式に決定されるエネ基本計画。有識者からは既に4年後の改定を見据えた準備の必要性も指摘されている。具体化に向けてどう道筋をつけるか。政府には責任ある施策の実行が求められる。

電気新聞2018年5月18日