JERAは20日、デジタル発電所(DPP)の実現に向けて開発したアプリケーションを組み合わせた「DPPパッケージ」を、国内外の発電所に導入していくと発表した。所員は、従来のデータ収集・分析業務ではなく、データの活用業務に集中できるため、働き方が大きく変わる。補修最適化やAI(人工知能)活用による熱効率向上、人件費削減などにより、65万キロワットを3基運転する発電所では40年間で約400億円の費用削減効果を見込む。
 DPPは、O&M(運転・保守)を中心に火力発電所の運営業務をデジタル技術で変革させるJERAの全社大のプロジェクト。海外展開する際のセールスポイントの一つとして、実現を目指している。
 リプレースが進むJERA姉崎火力発電所では、既に運転を開始した新1号機(64万6900キロワット)、新2号機(同)で、所員に導入教育を行った上でDPPパッケージを導入。8月に運転開始予定の新3号機(同)にも導入し、使いながら効果の検証や改良を行う。
 5月には武豊火力発電所、6月には横須賀火力発電所にもDPPパッケージを導入する計画。その先は、国内外の発電所に順次導入するとともに、外販も検討する。
 DPPパッケージは、約20種類のアプリで構成。性能管理系アプリでは、これまで熟練エンジニアが手入力で管理していた設備データを、オンラインで管理し、データ収集から分析まで自動化した。
 設備不具合系アプリに関しては、不具合発生の警報に対し、部署が分かれている運転部門とメンテナンス部門で、リアルタイムに共有できるようにした。また、工程管理系アプリでは、安全に作業ができる環境が整ったことを作業員に一斉に通知することで、作業の待ち時間を短縮できる。
 さらに、発電設備の稼働や停止の計画を立てる際に、卸電力価格など市場の状況から電力需給状況を分析してサポートするアプリも開発した。
 DPPパッケージの実用化に向け、熟練エンジニアが様々なアプリを開発し、発電所での試運用とフィードバックを基にアプリを改修して再導入する開発サイクルを、約2年間繰り返した。
 今後は、デジタルツインやAI最新技術の開発・導入も進める。デジタルツインでは、現場情報を遠隔監視し、高精度予測などを実現する。
 JERAによると、複数のアプリケーションをパッケージ化し、発電所のO&Mソリューションとして活用するのは世界初の試みとなる。JERAは「DPPを通じ、エネルギー安定供給のさらなる追求と電力産業の次世代への変革をリードしていく」とコメントした。
電気新聞2023年4月21日