中堅新電力の福島電力(福島県楢葉町、眞船秀幸社長)が電力小売事業から撤退することが分かった。電気料金請求の遅延や問い合わせ電話の不通など運用面の不備を理由としている。4月下旬頃から顧客に順次、他社に切り替えを促す通知を送っているが、期日は5月21日と1カ月に満たない。いまだに電話がつながりにくく、11日時点でホームページ上に撤退情報もない。顧客に不安が広がっている。

 電力・ガス料金比較サイトのエネチェンジ(東京都千代田区、有田一平社長)は10日、福島電力の顧客向けに切り替え支援を始めた。ホームページに特設ページを設けて切り替えに関する情報を提供するほか、専用の電話窓口を開設して需要家の不安に応える。

 福島電力は2017年4月から供給を始め、沖縄県を除く全国で展開してきた。18年1月の販売量は1558万キロワット時と新電力で73位。低圧に限ると1261万キロワット時で新電力30位となり、急成長を遂げていた。低圧顧客数は5万件前後とみられる。

 賃貸不動産会社と提携し、入居に合わせて電気の契約を結ぶ手法で顧客数を積み上げてきた。だが、入居者が福島電力以外の小売電気事業者を選ぶことができなかったり、同意なく契約を結ばされたりするなど、強引な営業手法が問題視されていた。

 さらに、契約後も電気代の請求書が届かなかったり、同じ月の請求が2回来たりして、不満は高まっていた。電話もつながりにくい状況が続き、福島電力はコールセンターを2月に増設したが対応しきれず、撤退に追い込まれたもようだ。

 顧客には「ビジネスモデルの変更に伴う電力会社切り替えのお願い」と題した通知を送付。自ら電力を小売りする事業から、小売電気事業者を紹介する事業に変更したと説明している。

 顧客の獲得手法や撤退理由、切り替え期日の短さなど、大東エナジー(東京都港区、佐藤功次社長)と似通う点が多い。大東エナジーは切り替え先として大手電力会社を紹介したが、福島電力は料金の安さを理由にLooop(東京都台東区、中村創一郎社長)を紹介している。

 ある新電力は「日本ロジテック協同組合や大東エナジーが撤退したときのように、顧客に『やっぱり新電力より大手電力の方が安心』と思われないか不安だ」と懸念を示す。

電気新聞2018年5月14日