IHIが開発した100kW級海流発電実証機「かいりゅう」
IHIが開発した100kW級海流発電実証機「かいりゅう」

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、IHIが実施する海流発電システムの長期実証事業を採択した。同システムは黒潮の流れを利用して安定的な発電を行うもので、鹿児島県沖で昨年実施した実海域の短期実証に続くステップ。2018年度から事業化可能性調査(FS)を行い、海域を選定した上で2020年度までに1年以上の長期実証を行う予定だ。離島向け電源として2030年以降の実用化を目指す。

 IHIはNEDOの助成を受け、2017年に100キロワット級の海流発電実証機「かいりゅう」=写真=を開発。同年7~8月に鹿児島県十島村の口之島沖で実証試験を行った。この時は船舶で実証機を引っ張るえい航試験と、海底に実証機をロープで係留して黒潮が流れる水深30~50メートル付近に浮遊させる実証試験を各1週間程度実施している。

 そこで発電性能や安全性などが確認できたため、より長期の実証に乗り出すことにした。今後3年間の実証では、まず実海域の環境変化や系統に接続するための調査などを行うFSを実施。実用化の可能性と事業性が高いと判断すれば長期実証に移行する予定だ。NEDOは総事業費の3分の2に相当する22億円を負担する。

 長期実証で1年以上にわたる発電能力や設備の耐久性、経済性などを検証する。実証を行う海域はFSを通じて選定するため、現段階では未定だという。ただ、政府は公募を経て全国6県・8海域を海洋エネルギー発電の実証フィールドに選定している。この中では十島村の口之島・中之島周辺が黒潮の利用に適している。

 日本沿岸を流れる黒潮は一定方向で安定した流速を保ち、世界的にも強い海流として知られている。

 うまく発電に利用できれば、年間を通じて安定した出力が得られる再生可能エネルギー電源になる可能性がある。

電気新聞2018年4月27日