新会社のロゴを掲げる(右から)東電EPの田村常務取締役、新会社の田中社長、パネイルの名越社長(24日、東京・内幸町)
新会社のロゴを掲げる(右から)東電EPの田村常務取締役、新会社の田中社長、パネイルの名越社長(24日、東京・内幸町)

 東京電力エナジーパートナー(EP)と新電力のパネイル(東京都千代田区、名越達彦社長)は、全国で電力・ガスの販売を行う新会社を共同出資で立ち上げ、5月からサービス提供を順次開始する。2020年度末までに150万件の電力契約獲得を目指す。家庭向けの割安料金だけでなく、全国の不動産管理会社向けに、複数のマンション契約に一括対応できる新サービスを打ち出し、他社との差異化を図る。

 両社がパネイルの電力小売り子会社に追加出資する形で、4月2日に合弁会社「PinT」を立ち上げた。資本総額は8億円で、出資比率は東電EPが6割、パネイルは4割。本社は東京都千代田区で、社長には東電EPの田中将人氏が就いた。

 東電グループでは、これまでに東電ホールディングス(HD)100%出資で電力の全国販売を手掛ける「TRENDE」を設立し、3月末に営業を始めた。PinTはそれに続く第2のサブブランド。東電EPが同業他社と電力小売りの合弁設立に踏み込んだのは初めてだ。

 人工知能(AI)とビッグデータを活用し、小売りの営業活動を効率化する電力流通プラットフォーム技術で強みを持つ新電力と組むことで、東電EPが保有する需要家のデータなどを生かした新サービスを柔軟に展開する狙いだ。

 新会社は全国で電力・ガス販売を展開する。電力小売りは6月から全国(沖縄を除く)で家庭、商店・飲食店などの小口向けに各エリアの大手電力より数%安い料金プランを提供する。将来的に沖縄でのサービス提供も視野に入れる。

 料金単価は各地域の電力会社の従量電灯と同一で、毎月の電気料金の総額に応じて段階的に割引率が高まるようにする。5千円までは1%、5千円を超えて2万円までは3%、2万円を超えて5万円までは5%、5万円を超える料金には7%の割引を適用する。

 また、不動産管理会社を対象に、複数のマンションの電気料金をまとめて契約できるようにする新サービス「PinT with 賃貸」も5月から開始する。

 都市ガス販売では18年度上期をめどに、関東で販売できるよう準備を進める。18年度中には関西、中部エリアへの参入を目指す。

 FIT(再生可能エネルギー固定価格買取制度)による太陽光発電の買い取り期間終了後、自家消費や融通のニーズが高まる可能性を見据え、東電EPが実証中の「電気のお預かりサービス」を新会社で提供することも検討する。

 24日に都内で会見したPinTの田中社長は「ユーティリティー3.0の先駆者として新しい時代を切り開いていく」と抱負を述べた。パネイルの名越社長は「エネルギー市場全体に有益となる新しい価値を創造していきたい」と語った。

電気新聞2018年4月25日