NCSのネットワークに属し充電カードで利用できる急速充電器
NCSのネットワークに属し充電カードで利用できる急速充電器

 電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)といった電動車用充電器の整備が進んできた。自動車メーカーと電力会社、日本政策投資銀行が出資する日本充電サービス(NCS)のネットワークに属する充電器が今年2月に2万基を突破したからだ。充電器の整備が進み、出先で「電欠」に陥る心配はかなり減るだろう。電動車の普及を後押しする要因になる一方、電動車が増え続けると充電器の利用マナーも重要な課題になりそうだ。

 電動車は出発前に自宅などで充電するのが基本。ただ充電器の整備状況が分からない場合、出先でガス欠ならぬ「電欠」に陥らないかと不安を感じて電動車の購入をためらう人もいるだろう。その不安を解消するには、誰でも利用できる公共用充電器の整備拡大が欠かせない。

 NCSはこの公共用充電器ネットワークの整備を目的として2014年5月に設立された。トヨタ自動車と日産自動車、ホンダ、三菱自動車、政投銀が立ち上げ、現在は東京電力エナジーパートナー(EP)と中部電力も資本参画している。

 当初は充電器の設置者に対し、国の補助金で賄い切れない設置費や電気代を含む維持費をNCSが負担して整備を加速した。充電器が一定数に達した15年6月からは、充電にかかる電気代の従量料金分を負担する形へと移行している。

 NCSが費用負担する設備はネットワークにつながり、1枚の充電カードを認証装置にかざせばどこでも利用できる。ユーザーは会費と利用時間に応じた料金をクレジットカードで支払う仕組みだ。自動車メーカー各社はこのネットワークを活用して自社のカードを発行しており、独自の料金メニューを設定する例もある。
 
 ◇電欠の不安なし
 
 NCSのネットワークに属する充電器は今年2月末時点で急速充電器が約6千基、普通充電器が約1万4600基に達した。急速充電器の数だけでも、全国の道路の総延長距離で割れば約37キロメートルに1基の計算。NCSの平田健二事務局長は「ほぼ電欠の不安なく走行できる」と話す。

 設置場所は急速充電器の場合、自動車メーカーの販売店が最も多く2千基超。高速道路のサービスエリアなどは400基弱となる。普通充電器は最も多いのがショッピングセンターで、6千基超が設置されている。

 このほか、無料開放の設備などNCSのネットワークに属さない充電器も含めると全国で2万8千基以上あると推定される。
 
 ◇情報発信を強化
 
 NCSは電動車に対する関心の高まりや今後の普及を見越し、充電器の使い方に関する情報発信も強化する考え。急速充電は最長30分までと利用時間に上限を設けているが、給油より時間がかかる。設置する充電器が1基だけという施設も多く、混雑時には「充電待ち」の状態が発生して利用者間のトラブルに発展する懸念もある。

 NCSは今後ホームページなどを通じて(1)充電完了後は速やかに移動する(2)充電ケーブルやコーン標識は元の位置に戻す(3)混雑時は早めに充電終了して場所を譲る――といったマナーを周知する。平田事務局長はこれらを守ることで、「皆さんに気持ちよく充電器を使って頂きたい」と話す。電動車が普及することを考えれば、利用者のマナー向上は一層重要になりそうだ。

電気新聞2018年4月12日